性暴力の実相・第3部(1)セクハラ「当たり前」

西日本新聞

 始まりは、ちょっとしたやりとりだった。大手スポーツ用品メーカーに入った20代のユウコさん=仮名=が、営業成績に関する個人面談を受けていたときのこと。直属の上司である課長は、仕事の話をやめてこう切り出してきた。「今度食事に行こう」。その場はやんわりと断った。

 それからユウコさんの携帯に次々に誘いのメールが届くようになる。関西にある花形の営業部。ここで頑張るという決意や課長の押しの強さが影響したのかもしれない。あきらめて食事に行くと、今度は職場の上下関係を使った脅しのような言葉が待っていた。

 「断ったら、おまえの評価を下げようと思っていた」。居酒屋で席に腰掛けるなりの第一声。酒をあおりながら、課長の暴言は止まらなかった。

 「次はデートだ。当然、ホテルに行くこともありえるからな」「長くこの会社でやっていくには、そういうのも大事だぞ」「耳にピアスを開けてるけど、胸にもあるのか。今度倉庫で見せてくれ」

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 1週間後、背中まであった髪を約30センチ切った。肌の露出が少ない服を着るようになり、スカートもやめた。化粧もしなくなった。仕事相手ではなく、性的な対象として見られていたことがショックだった。

 守ってくれるはずの会社のセクハラ対応窓口が事態を悪化させる。相談すると、すぐに職場に知れ渡った。部長はユウコさんを呼び出して「課長がイケメンだったら、(発言は)OKだったのか」。別の課の上司からは「俺の下半身はでかいぞ。これセクハラか?」と嫌みを言われた。女性の先輩からも「我慢して当たり前」と突き放された。

 冗談を聞き流せないつまらない女-。そう言われているようで涙が止まらず、眠れなくなった。「就活を頑張って入った大企業だから」と退職は踏みとどまったが、その冬の慰安旅行で再び打ちのめされた。 

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