性的少数者 医療、福祉機関は理解して 関係者向け啓発冊子 NPO

西日本新聞

 「心は女性なのに、男性の大部屋に入院するよう言われた」「医師からパートナーの病状説明を受けられない」-。同性愛者やトランスジェンダー(心と体の性が一致しない人)など、LGBT(性的少数者)は、医療や福祉のサービスを受ける際に、壁が立ちはだかることが少なくない。そんなニーズを知ってもらおうと、大阪市のNPO法人QWRC(クォーク)が啓発冊子「LGBTと医療福祉」を作り、無料配布している。

 関西地方に住む徳田陽さん(33)=仮名=は8年前、交際中の同性パートナーからのドメスティックバイオレンス(DV)被害に悩んでいた。激しい嫉妬から外出を妨害されるようになり、椅子や包丁を振り回され、「死んでやる」と脅された。支援団体に助けを求め、公的シェルターに保護された。

 DVから逃れるために仕事は辞めざるを得なかった。度重なる暴力でうつ病になり、通院が必要だが、お金がない。生活保護の申請を勧められ、役所の窓口を訪れた。担当職員にDV被害のことを話すと、「なぜ女性同士で交際していたのか」「相手が男性だと思い、だまされていたのか」などと、交際自体について根掘り葉掘り聞かれた。

 徳田さんは「DVで心身ともにつらいときに、LGBTとは何かということから説明しなければならず、きつかった」と振り返る。結局、生活保護の申請をあきらめ、友人からの援助で乗り切った。「相手の性別が何であろうと、DV被害者であることに変わりはないのに」

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 医療現場においても、さまざまな困難がある。

 昨年4月に入院した遠藤まめたさん(29)=東京=は、女性の体で生まれたが、心は男性というトランスジェンダー。認可薬は不妊のリスクがあるからと、医師に月6万円の未承認薬を薦められた。「子どもを産むつもりはない」と言っても理解されず、トランスジェンダーだと打ち明け、認可薬を使うことになった。

 遠藤さんは「医師にLGBTの知識があったから、すぐに理解してもらえ、スムーズにいった」と話す。

 トランスジェンダーの場合、性別が記載された保険証を出すことや名前を呼ばれることへの抵抗感から、医療機関の受診をためらい、病気が悪化してしまう例も少なくないという。パートナーが同性の場合は、手術の同意書にサインができない、臨終の立ち会いを認められないといった事例もある。

 「LGBTは二重のマイノリティーになりやすい」と遠藤さんは指摘する。偏見や差別を恐れ、適切な支援が得られなかった結果、貧困や薬物依存などに陥ってしまうという現実がある。

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 冊子は、医療福祉関係者へ理解を深めてもらうのが狙い。2009年に作成したものを今年1月末に大きく改訂した。DV、薬物依存、自殺リスク、障害、介護、子育てなど17のテーマで、LGBTがどのような困難に直面し、支援を必要としているのかを、具体例を交えて紹介している。末尾には相談窓口も掲載した。

 QWRC共同代表の桂木祥子さん(39)は、「医療や福祉のサービスを受けるのをためらうLGBTは多い。どんなニーズがあるのかを知ってもらうことで、対処できることがある」と話す。2万部を印刷し、無料で発送している。インターネットでも入手できる。問い合わせはQWRCのホームページ=http://qwrc.jimdo.com/=から。

 ●LGBTのDV相談 福岡県が窓口開設へ

 福岡県は、LGBT向けのDV被害の専用相談窓口を新年度に開設する。県によると都道府県レベルで全国初という。

 近年、同性間のDVや男性の被害者からの相談が増加。「理解してもらえないかも」との不安を解消するため、男性の相談員を置き、LGBTは月に2回、男性は週に3回、専用電話で相談を受け付ける。

 市町村や民間の相談員向けに、LGBTや男性の被害者への対応に関する研修も実施する。新年度当初予算案に計445万円を盛り込んだ。


=2016/03/17付 西日本新聞朝刊=

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