産後危機 夫婦寄り添って 子育て教室主宰 山本ユキコさん 男性向けに対処本

西日本新聞

 「赤ちゃんが夜泣きしても、夫は起きない」「産後、妻がいつも不機嫌」-。出産後、妻のイライラや夫婦のすれ違いが積み重なって起きる「産後クライシス(危機)」。0~2歳の子どもがいる夫婦が離婚する、大きな一因になっているといわれている。どう乗り越えたらいいのか。産前産後の女性の心理や対処法を男性向けに説いた「出産・育児ママのトリセツ」(忘羊社)を出版した、心理学博士で子育て教室主宰の山本ユキコさん(41)=北九州市八幡西区=の自宅におじゃまし、ユキコさんと夫の彰吾さん(42)に聞いた。

 母親で居続けることの緊張や社会と隔絶された孤独感、「自分には味方がいない」というマイナス思考が重なり、心身の疲労が加速する…。ユキコさんは2人の娘を出産し、そうした感覚を体験した。

 「ホルモンバランスの変化でそうなると分かっていたはずなのに。イライラはアラームのようなもの。封じ込めようとすると爆発してしまう。意志の力でコントロールできるものじゃないと実感したんです」

 こうした産前産後特有の心身の状態を、もっと男性が理解し、的確なサポートができれば産後クライシスも防げるのではないか。男性向けの子育て講座で、そんな話をしていたところ、出版社から出版の話があり、「産前産後の女性の“取扱説明書”(トリセツ)」を書くことになった。

 本は、楽しく読めるように、夫と妻それぞれがツイッターに投稿するスタイルで書いた。例えば、産婦人科から母子で退院し、帰宅した場面での、妻のツイッター。

 新米ママ「ついに帰宅。まだキツイ。イタイ。案の定、家の中はゴミため状態。パパにうったえたら、義母を呼ぶって。マジで?」

 ページをめくると、産後1カ月ほどは会陰切開の傷が治っていなかったり、開いた骨盤が戻っていなかったりするため、体を休ませる時期であるという、「トリセツ」らしい参考になる情報も掲載している。普段家にいない人に家事を頼むのはストレスになることなども紹介し、「家事の主力はあなた(夫)だ
ということを肝に銘じましょう」とアドバイスも。

 夫「オレだって感謝されたい! 毎日がんばってるのに。子育ても、仕事も」

 夫のつぶやきには、妻も夫の気持ちを分かってほしい、という思いを込めた。

 § §

 彰吾さんは、産前産後のユキコさんのことをどう思っていたのだろうか。公務員の彰吾さんは、朝は豚汁などを作って出勤し、食器や風呂洗いも自主的にこなした。子どもが発熱した際には、職場の看護休暇制度なども利用した。「イライラには気付いていた。でも、それが嫌だから家事や育児をしているのではなく、自分の子どもや家庭のことだから当然かな、と」

 ユキコさんは、家事や子育ては「チーム」で行う仕事だと指摘する。「祖父母も含めた大家族で家事や育児をしていたのが日本の伝統で、そもそも妻一人でこなせる仕事量ではない。妻も『私が一人で何とかしなきゃ』という呪縛が強いんです」

 妻の産後のイライラに対処し家庭内のストレスが軽くなれば、仕事の効率も上がると山本さん夫婦は考えている。そのため、ユキコさんは今後、子育て支援の重要性を企業にも呼び掛けていくつもりだ。「子育てチームの要は家族や保育所、幼稚園だが、会社がメンバーに入ればいいなと思う。子どもを社員同士で短時間預け合うなど、『子育てをシェアする』という仕組みもいいかもしれない」

 「出産・育児ママのトリセツ」は四六判160ページ、1512円。問い合わせは忘羊社=092(406)2036。


=2016/03/22付 西日本新聞朝刊=

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