【虐待 支援の糸口は】ほしおか十色さん体験語る<下>心解かした大人の熱意 過去吐き出す「棚卸し」必要

西日本新聞

 子ども時代に虐待を受けた経験のある元ホステス、ほしおか十色さん(29)=福岡市=が2月、福岡市こども総合相談センターの児童福祉司研修で講演した。3月25日掲載の(上)に続き、今回は、支援者と出会った高校時代以降、虐待の体験を支援者とどう乗り越えてきたか、支援のヒントになる部分を紹介する。進行役を務めた同センターの藤林武史所長、ほしおかさんに寄り添ってきた福岡県警少年課の堀井智帆係長の3人で語り合った。

 -暴力団の犯罪に巻き込まれたことを、偶然再会した中学時代のスクールカウンセラー(SC)に漏らすと、ドライブに誘われた。

 ほしおか 着いた先がこの(福岡市こども総合相談センターや県警福岡少年サポートセンターなどがある)えがお館だった。忘れもしない、相談室6番。

 堀井 事前に、SCから「大変な問題を抱えている子を連れて行きます。逃げるので、だまして連れて行きます」との連絡があった。初めて会った印象は「普通の子」でした。でも実際は「何ここ。誰あんた。あたし何も話さんけん」という態度。話してくれない理由は親でした。

 ほしおか 「親御さんに連絡を…」となるのが嫌だった。でも堀井さんは「警察です、支援者です」という感じではなくて、一人の人として話してくれて「こんな大人もいるんだ」と思った。この人だったら信用していいかな、と。もっと早く出会っていたら、私の人生は変わっていたかもしれない。

 -犯罪は警察が介入し事件化された。しかし、ほしおかさんの相談電話や大量服薬への依存、摂食障害は止まらなかった。性的虐待についても、堀井係長は相談電話の情報で把握していたが、ほしおかさんは被害を頑として認めなかった。

 堀井 全国の相談電話にかけているので彼女は有名でした。実体験のある人しか語れない内容なのに、本人に聞くと「いやいや、それはなーい」と否定する。その扉はなかなか開きませんでした。

 ほしおか 語るつもりもなかったんです。性的虐待がなかったことにしたいという気持ちが大きかった。でも堀井さんは、私が入ってきてほしくない部分にどんどん入り込んでくる。SCの先生にだまされてここに連れてこられたときもそうですが、そういう強引さって大事なんですね。

 -ある朝、ほしおかさんは薬物を摂取した状態で、堀井係長に電話し、性的虐待の事実を打ち明けた。その後、薬物依存の回復プログラムを受ける。

 ほしおか 性的虐待の被害を打ち明けてからも、周りの人から「それでも、生きているからいいんだよ」と受け入れてもらった。それがなければずるずる依存が続いて死んでいたかもしれません。

 -その後、ほしおかさんはホステスの仕事をしながら歓楽街をさまよう少女たちに声を掛け、支援者につなぐ活動をしてきた。

 堀井 そういった活動や体験を語ることも、心を回復するステップ。起こったことをさらけ出して整理する「棚卸し」と、お世話になった人たちにお礼する「埋め合わせ」が、何かに依存しなければいけない環境を変えていく。

 -講演の最後に、ほしおかさんは今後どう生きていきたいかを尋ねられた。

 ほしおか 「夜回りホステス」と新聞に出たが、ただおせっかいをしていただけ。これからは昼間の仕事をしながら、子どもたちやいろんな人たちとつながっていきたい。

 藤林 性的虐待の被害に遭った人たちが集う機会が欲しいですね。

 ほしおか サバイバーズ(虐待を生き延びた人たちの)カフェですね。やりましょう。


=2016/04/01付 西日本新聞朝刊=

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