寝たきり芸人 笑い起こす 重度障害者のあそどっぐさん(37)=熊本県合志市

西日本新聞

ライブでネタを披露するあそどっぐさん 拡大

ライブでネタを披露するあそどっぐさん

 動くのは顔の筋肉と左手の親指だけ。「みなさん、お正月はどう過ごしましたか。僕は今年は寝正月でした」。お笑いタレントのあそどっぐさん(37)=熊本県合志市=は、生まれつきの脊髄性筋萎縮症だ。「寝たきり芸人」を名乗り、障害を自虐的なネタに。障害者、健常者といった線引きもブラックユーモアに変え、じわじわと人気を集めている。

 養護学校(当時)の高等部にいたころ、先輩に「なんか面白いことやれ」と言われ、筋ジストロフィーの同級生と組んで学校行事でネタを披露。笑わせる気持ちよさを知った。その相方が23歳で他界。ショックでお笑いをやめ、書きためたネタ帳も捨てた。

 しかし、5年ほど前、ウェブで動画を配信する「ニコニコ生放送」を知り、路上ライブの感覚で放送を開始。パソコンのマウスを唇で操作しながら放送し、その回数は440回に上る。NHKの障害者のバラエティー番組「バリバラ」でお笑いグランプリに出場し、さらに知名度を上げた。

 障害は自分にとって特別なことではない。「太った芸人の肥満ネタと同じ。笑いが取れればそれでいいんです」。中でも、“ずるい障害者”を演じるコントが印象的だ。ハリセンでたたかれそうになると「いたいけな重度障害者をたたいていいの?」と悪い顔でにやり。

 障害者からの非難も予想したが「すっきりした」という感想が届いた。「障害者は心がきれいでなければ、というモヤモヤから自由になったのでは」と言う。

 月1回、福岡市中央区で開かれるお笑いライブ「W-1グランプリ」にも参加。初めは戸惑いもあった芸人仲間も「あそどっぐ、起きてたの?」とボケたり、ツッコミで車椅子を蹴ってくれたりするようになった。

 ツイッターでは「きもい」「税金で食べてるくせに」と非難されることもあるが、意に介さない。「芸人が一番怖いのは無関心。非難は、返し方次第で笑いにできる」としたたかだ。当面の目標は、にぎやかし役を意味する「ひな壇芸人」。「ひな壇に横たわりたいですね」 


=2016/04/05付 西日本新聞朝刊=

連載「青空 あなたの物語」はこちら

PR

PR

注目のテーマ