小1プロブレム(3)黄金の3日 「学級開き」が始まった

 新1年生ばかりでなく、先生たちも緊張した入学式は12日、無事に終わった。それには少し訳があった。

 前日夕、入学式準備が整った体育館には、十数人の子どもと親が集まっていた。親からの要望もあり、希望者を募って始めた「入学式リハーサル」。配慮が求められる子どもを中心に、基本動作を確認しておくためだ。初めて見る光景だった。

 「この学校ではありませんが、来賓あいさつの途中、子どもがドキッとした発言をしたり、動き回ったりしたことが、何度かありましたから」と、ある教諭。練習中、体育館を駆け回る子どももいた。

 いよいよ入学式本番。4クラス、約120人の新1年生は滞りなく、教室から体育館に入場。「1人でできるようになろう」「友達と仲良く」。校長の話を静かに聞いていた。

 ただ、各クラス後方には担任とは別に、教諭2人が控え、落ち着かない子どもには、こまめに駆け寄り、背中をさすり、声掛け。入学式はそんな準備と支援があって、何とか持ちこたえているのが実情だった。

   ◇   ◇

 本格的な「学級開き」は翌日から始まった。入学式からの3日間、担任の対応次第でクラスの秩序も乱れも固まっていく。「黄金の3日」と呼ばれる。

 新1年の学年主任になったイシイ教諭(50代)のクラスでも、午前8時15分から「朝の会」が始まった。前日に習った「あいさつ」を終えると、初の出席・体調確認。名簿順に氏名が呼ばれ、「ハイ、元気です(おなかが痛いです)」などと、挙手と返事をしていく。

 最初、子どもたちの声は小さく、手も半分ほどしか挙がらない。だが、中盤に入ったころ、ある子どもが手をピンと伸ばし、元気よく返事をした。イシイはそこで「いい手の挙げ方ですね」と褒めた。すると、後の子どもたちの挙手と返事はがらりと変わった。

 ランドセルの置き方、教材をどう引き出しに入れるか、靴箱の使い方…。1年生の学びは、そんな所から始まる。

 イシイのクラスには、特別支援学級に在籍する2人もいて、朝の会と帰りの会、体育、音楽、図工などの授業では一緒に学ぶ。子どもたちは、この日もじっと着席していることが難しく、ガタガタと音を立てたり、教室から外に出ようとしたりした。それは、時がたつに連れ、目立ち、周囲の子どもたちにも広がっていく。

 そうした子どもたちに個別対応するため、特別支援学級の担任や支援員が各教室を巡回している。イシイの教室にはピーク時、4人の支援が入った。

 その日の授業は午前11時ごろには終わり、イシイは子どもたちの下校にも同行した。帰り道、イシイは「いやー、思った以上に大変でした」と話した。

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 1年生の学びのポイントは「(人の話を)聞く」と「(学校に)慣れる」だという。担任4人は、色刷りのイラスト教材などを用意し、「目から入る情報」を多くし、子どもたちに分かりやすく伝えようと、指導に工夫しているという。

 この日の授業で最も盛り上がったのは、イシイが「先生に何か聞きたい人?」と質問したときだった。「北風小僧の寒太郎」(好きな歌)、「桜」(好きな花)、「カブトムシ」(好きな虫)…。ちょっとした息抜き時間だったが、終わろうとすると、子どもたちは「えーっ」。子どもたちの担任への強い関心がうかがえた。

 学年主任となり、より重たいクラスを担任することになったイシイ。「きょうよりは、あす、あさって。クラスのモデルになるような子どもを一人ずつ増やし、広げていくしかないと思っている」。自身に言い聞かせるように、話した。

 背景に発達障害も

 公立小中学校の通常学級には、「書く」「聞く」「計算する」などの特定分野の学習が困難な学習障害(LD)、注意力の欠如などが見られる注意欠陥多動性障害(ADHD)など、発達障害のある児童生徒が6.5%いることが、文部科学省の2012年調査で分かった。40人学級で1クラスに2、3人の割合。

 小1プロブレムの背景には、発達障害の子どもたちの現実もある。調査では、6割の子どもが「座席の位置を教員の近くに」「個別指導」などの支援を受けていたが、4割は特別な指導を受けていなかった。

 イシイ教諭のクラスには、特別支援学級から通ってくる2人に加え、軽度ではあるが、その疑いや傾向がある子が何人か見られる。前年度まで特別支援学級の担任だったイシイが、新1年の学年主任に起用された一つの理由でもある。

=2016/04/17付 西日本新聞朝刊教育面=

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