震災関連死 対策急務 熊本地震 エコノミー症候群、感染症

西日本新聞

 熊本県を中心とした一連の地震は大勢の人が避難所に身を寄せたままで、車に寝泊まりする人も少なくない状況が続く。懸念されるのが、避難生活の疲労やストレスなどによる「震災関連死」。すでに犠牲者が相次いでおり、専門家は早急な対策を求めている。

 震災関連死は、津波や建物の倒壊などによる「直接死」ではなく、避難生活による肉体的・精神的疲労や、病院の機能停止による持病悪化など「間接的な要因」で亡くなること。今回の地震では、熊本県阿蘇市の77歳女性が避難所のトイレで倒れているのが見つかり死亡が確認された。車中泊していた熊本市の51歳女性は肺血栓塞栓(そくせん)症(エコノミークラス症候群)で亡くなった。

 震災関連死が初めて注目されたのは1995年の阪神大震災。神戸市によると阪神大震災の全犠牲者の14%に当たる921人が関連死。インフルエンザ感染や、水不足で口内に細菌が増えたことによる誤嚥(ごえん)性肺炎が引き金となった例が目立った。

 2004年の新潟県中越地震では死亡者68人のうち52人が避難中に亡くなった震災関連死とされる。11年の東日本大震災の震災関連死は昨年9月時点で約3400人。9割近くが高齢者。原発事故で長期避難や移住を強いられた福島県民が約6割を占める。今なお増え続けているという。

 震災関連死は認定されれば、遺族は国と自治体から災害弔慰金を支給される(主たる生計者は500万円)。認定は市町村が遺族の申請に基づいて実施。復興庁によると、全国統一の認定基準はなく、市町村に任されている。熊本市は基準を設けておらず「今後必要」としている。

■睡眠、運動、水分補給、口内清潔に

 「震災関連死」を防ぐために避難生活でどんなことを心掛ければいいのか。日本循環器学会、日本心臓病学会、日本高血圧学会が、アドバイスとして「避難所における循環器疾患の予防」に関する3学会共同声明を発表した。

 声明は「循環器系は最もストレスの影響を受けやすい臓器系の一つ」とし
「睡眠」「血栓」「食事」「体重」「内服薬」「血圧」など9項目で予防法を提示している。

 「睡眠」は、避難所での対処法として、夜間消灯に加え、アイマスクや耳栓、振動予防のマットレスの使用を推奨。「運動」は一日20分以上歩くことを提案。済生会福岡総合病院の山本雄祐副院長(循環器内科医)は「避難所のみんなで体操するのも有効」と話す。

 「血栓」では夜間尿が増えても、水分を十分とるよう呼びかけている。「食事」では無塩のトマト・野菜ジュースを薦めている。「体重」は2キロ以上減った場合、脱水や栄養障害が考えられると指摘。逆に2キロ以上増加したら、心不全や慢性腎臓病の悪化やカロリーの取り過ぎなどを確認するよう求めている。特に震災後は高齢者の心不全悪化が増加するとし、夜に息苦しさなどを自覚したら医師の診察を受けるよう呼びかけている。

 「内服薬」では、普段飲んでいる薬が分からなくなった場合、医師に相談するよう助言。「血圧」では災害時に循環器疾患を発症させる引き金の一つが高血圧と指摘している。

 一方、福岡歯科大の内藤徹教授(高齢者歯科学)は「口の中の清潔さを保つのも大事」と強調。特に高齢者は口の中が汚れていると、命の危険もある誤嚥性肺炎を患いやすくなるので要注意という。対策として「歯磨き」を挙げ「コップ半分の水があればできるので、しっかりやって」とアドバイス。入れ歯の清掃も怠ってはならないとし「水が少ないときは、水を含ませたガーゼで汚れを拭き取って」と呼びかける。


=2016/04/23付 西日本新聞朝刊=

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