教育はどこへ特集(1)「義務教育学校」導入 押し寄せる変革の波

西日本新聞

 東京五輪が開催される2020年、日本の教育はどう変わっているのだろう。国が矢継ぎ早に打ち出す教育改革の波はあまりに大きい。主な項目を挙げるだけでも、英語教育の早期化、道徳の教科化、大学入試改革…。その背景には、グローバル化に対応した人材育成、深刻化するいじめ問題、21世紀型学力の獲得などがある。4月から導入された「義務教育学校制度」も、戦後一貫して維持されてきた学制「6・3制」を見直す動きでもある。子どもたちにとって教室や教科書、テストはどう変わり、教育はどこへ向かおうとしているのか。

■「義務教育学校」って何? 中1ギャップの解消狙う

 小学校6年、中学校3年の義務教育9年間のカリキュラムを、地域の実情に応じて弾力的に運用できる義務教育学校制度が4月導入された。学校教育法が改正され、市区町村の教育委員会判断で、学年の区切りを「4・3・2」「5・4」などに変更できるようになった。どう変わるの?

 Q 新制度導入の狙いは何だろう。

 A 「中1ギャップ」解消の狙いが大きい。小学校は担任が全教科を教える学級担任制。中学校は教科ごとに先生が代わる教科担任制。そのギャップから学校になじめない生徒が目立ち、不登校やいじめ、学習のつまずきが増える傾向にある。小中学校の段差を低くし、スムーズな学びを実現する狙いがある。

 Q 具体的にどう変わるの。

 A 小中学校を「4・3・2」と区切る場合、小学5、6年から教科担任制を導入。中学校の先生が小学校高学年を教えたりする。算数では、5年生から割合などの問題が解けなくなり、算数嫌いが増える傾向にある。専門の先生が教えることで、つまずきを解消しようとしている。

 Q 小学校と中学校は、どう連携するの。

 A 同じ敷地内に小学校と中学校がある「施設一体型」と、小中学校が別々にありながら、先生同士が互いに授業に出向いたり、9年間の一貫カリキュラムを編成したりする「施設分離型」がある。これまで私立学校でよく見られた取り組みを、公立学校にも広げようとする動きだ。

 Q 学力強化の狙いも大きいようだね。

 A 新制度では、学習指導要領(国が定めた学年ごとの学習基準)に沿いながらも、市区町村の判断で一定程度のカリキュラム前倒しができる。現在、私立小中学校でみられるように、中学3年時を受験勉強に充てるようにならないか、懸念の声もある。

 Q 日本で6・3制はいつ導入されたの。

 A 戦後、連合国軍総司令部(GHQ)の指示で来日した米国教育使節団が
導入を勧告。米国で19世紀から普及していた学制「6・3・3制」(小中高校)をモデルに1947年施行の学校教育法で導入された。ただ、米国では子どもの成長や学力に応じ、州ごとに分権型教育改革が進み、80年代からは「5・3・4制」が主流になっている。世界各国の学制もさまざまで、今回の改革はこうした動向も意識している。

 Q 課題や懸念も少なくないよね。

 A 「これまで小学6年生で培っていたリーダーシップが育たなくなるのではないか」「地域によって学制が違えば、混乱しないか」などの声も、現場や専門家には根強い。

 Q 新制度はこれから広がっていくの。

 A そこがまだ分からない。学力強化に向け、各地では小中、中高と、一貫型教育がちょっとしたブームになっている。今回の制度改革は、こうした動きを国が追認した形でもある。ただ、新制度に移行するためには、地域住民の理解や条例改正などの手続きも必要で、模様眺めの自治体が多いようだ。

=2016/04/30付 西日本新聞朝刊=

特集「義務教育学校」導入(2) 6・3制見直し 現場手探り

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