被災地、手探りの前哨戦 集会自粛、チラシ配れず

 事実上の与野党一騎打ちとなる参院選熊本選挙区(改選数1)は、熊本地震の余波で選挙風景が一変しそうだ。自治体職員は被災者支援にかかりきりのため、従来なら民進党の“実動部隊”となる職員労組の運動量低下は不可避。組織戦を中心とする自民党も、大規模な集会は自粛する方針だ。“選挙どころではない”被災地でそろり、手探りの前哨戦が続く。

 損壊した家屋を覆うブルーシートを大粒の雨がたたく。九州が梅雨入りした4日、無所属新人の阿部広美氏(49)は阿蘇市でマイクを握った。「アベノミクスで富裕層は潤ったが、恩恵は庶民に落ちていない」。民進、共産、社民の統一候補。約30分の訴えの大半を安倍政権批判に割いた。

 地震の影響が少なかった県南地域から街頭に立つものの「チラシを配る人間が足りず、集会の動員力もない」と自治労関係者。各党や市民団体などの“寄り合い所帯”にとって、市町村職員など約1万5千人の組合員を抱える県内最大の産業別労組、自治労は頼みの綱だが「組合員の疲労はピーク。無理は言えない。『なんで選挙なのか』と嫌がられることもある」という。70万枚準備した第1弾のチラシは半数近くが残る。

 安倍晋三首相が被災地を訪れたこの日、3選を目指す自民現職の松村祥史氏(52)は同行を避けた。「選挙アピールと映ればマイナス」(関係者)だからだ。

 熊本県益城町で事務所開きし、約300人の支持者の前で「本来であれば、憲法改正やTPP、アベノミクスなどを県民に問うべきだろう。初めて経験する震災の中での戦いは、どのような振る舞い、訴えをしていいのか分からない」。とまどいを率直に吐露した。

 自民は市町村や職域に張り巡らせた組織をフル稼働させ、集会を重ねて支持を広げるのが常道。しかし避難所暮らしが続き、生活再建がままならない被災者も多い。県連幹部は「今回は県全域から支持者を集めるような千人規模の集会はとてもできん。地域で運動の濃淡が出てくるだろうが、仕方ない…」。

 同選挙区には政治団体「幸福実現党」も新人の木下順子氏(57)を擁立する。

=2016/06/05付 西日本新聞朝刊=

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