妊婦の貧血注意 早産、胎児に影響の恐れ

西日本新聞

山本佳奈さん 拡大

山本佳奈さん

 妊婦の30~40%に貧血があり、胎児や出産に影響を及ぼす恐れもある‐。そんな深刻な状況を訴えようと、4月に「貧血大国・日本」(光文社新書)を出版した南相馬市立総合病院(福島県)の医師山本佳奈さん(27)に、妊婦や胎児、乳児の貧血について聞いた。

  貧血とはどんなものですか。

  日本で多いのは体内の鉄が不足する鉄欠乏性貧血です。鉄は血液中で酸素を運ぶヘモグロビンの材料で、鉄が足りないと細胞が酸欠状態となり、あらゆる問題を起こします。めまいだけでなく、肩凝りの原因になることも。何となく体調が悪い「不定愁訴(ふていしゅうそ)」が、鉄剤を飲むだけで治ることもあるんですよ。

  どんな人が気を付ければよいのですか。

  貧血は男性より女性に多く、年代を問わず対策が必要ですが、特に注意喚起したいのは20~30代の女性です。日本国際保健医療学会によると、貧血の妊婦の割合は、先進国では平均18%。しかし日本は30~40%に上るとのデータがあり深刻です。鉄は意識的に摂取する必要があり、海外では日常的に食べるシリアルや小麦などに鉄を添加しています。日本はそうした対策を行っていないことが原因と考えられます。

  妊婦の貧血にはどんな問題があるのですか。

  妊娠中は胎児に栄養や酸素を送るために、より多くの血液、鉄が必要です。貧血なら鉄剤を服用すればよいのですが、つわりで受け付けない人もいます。さらに問題なのは、効果が出るまでに最低でも1~2カ月かかることです。通常、赤ちゃんができたと分かるのは妊娠6週くらい。そこで鉄剤を飲み始めて、貧血が改善するのは妊娠10週ごろです。胎児の臓器がつくられるなど、最も成長に大切な妊娠6~10週に間に合いません。

 また米ハーバード大の研究では、妊娠初期から中期に貧血だった場合、早産や低出生体重児が生まれるリスクがいずれも1・2倍を超えています。近年、高齢出産のリスクは注目されていますが、貧血も重大な問題なのです。諸外国では、対策として小麦粉や砂糖などに鉄が添加されていますが、日本では公的な対策は特に行われていません。

  母体が貧血だと、赤ちゃんも貧血になるリスクがあるそうですね。

  胎児のころに十分な鉄を蓄えられず、生後半年から1年ごろに貧血を発症するケースがあります。ただ、生後半年から2歳ごろは、母体が貧血でなくとも鉄不足に陥る危険性があります。

 赤ちゃんは、母親の胎内で生後半年分くらいの鉄を蓄えて生まれます。母乳だけでは鉄が足りないので、自分で補います。生後5~6カ月ごろに離乳食を始める理由の一つは、蓄えた鉄がなくなる時期だからです。乳児期の鉄欠乏は免疫機能障害など、その後10~20年にわたり影響を及ぼす可能性があり、鉄不足を意識した離乳食が必要です。

  どんな対策が必要ですか。

  基本は一にも二にも食事です。鉄には消化吸収されにくい「非ヘム鉄」と、吸収されやすい「ヘム鉄」があります。それがどの食品に含まれ、何と一緒に食べると効率よく吸収できるのか。貧血がどんな仕組みで起こり、どんな影響を及ぼすのか。正しい知識を身に付け、予防するために、国としての対策も求められています。

 ◇「貧血大国・日本」は新書判、260ページ、842円。


=2016/06/11付 西日本新聞朝刊=

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