被災地に生きる 車中泊の母子 子ども食堂「一番幸せ」

西日本新聞

 長男の佑輔(9)はカレーライスをあっという間に平らげ、妹の百合(4)はうれしそうにラーメンを食べた。

 5月28日昼、地震で大きな被害が出た熊本県西原村。障がい者作業所「にしはらたんぽぽハウス」で開かれた子ども食堂に、近くの前原健二(28)夫妻と子どもたち=いずれも仮名=の姿があった。

 熊本地震で前原の一軒家は全壊。2年前に建てたばかりで、1500万円のローンが残っている。崩落した自宅前の私道の補修にも4千万円かかると言われた。

 食費を切り詰め、地震前まで3、4品は作っていた夕食のおかずは半分。配給のカップラーメンで済ます日もある。「お母さんおなかすいた」「ご飯が少ないよ」。食卓で子どもたちが不満を漏らす。

 たんぽぽハウスは週に1回、子ども食堂を開いている。高校生以下は無料。この日はカレーライス、ラーメン、親子丼から一品を選べた。佑輔はカレーライスだけでは足りず、ラーメンも食べた。

 手作りの料理をおなかいっぱい食べた子どもたちは、ほっとした様子だった。妻の貴子(36)=仮名=は「栄養バランスが取れた食事が無料で食べられるなんて、ありがたい」と、ボランティアに頭を下げた。

    ◇    ◇

 5月24日、熊本市東区の病院で地震後初めて子ども食堂「寺子屋カフェ」が再開され、車中泊生活を続ける3組の母子を招待した。

 ボランティアが子どもたちと遊んでいる間、母親には畳の和室に敷いた布団で昼寝をしてもらった。その後、親子は肉じゃがやチキンソテーに舌鼓を打った。

 「きれいな布団で眠れて、震災後、一番の幸せな時間だった」。子どもの世話に追われ、足を伸ばして寝ることもできなかった母親の一人は笑顔を見せた。別の母親は、支援物資として紙おむつや離乳食を渡され涙を流した。「避難所でも、ほとんどもらえない。こんなに頂いて、いいんでしょうか」

 寺子屋カフェを主催する佐藤彩己子(あつこ)(64)は5月22日、県内のボランティア団体を集め、多くの被災者が車中泊やテント暮らしをする熊本市南区の公園で炊き出しもした。子どもたちが列をなし、50人分の豚丼は瞬く間になくなった。

 佐藤は熊本市で2月から子ども食堂を定期的に開いてきた。「地震が経済的に厳しい家庭を、さらに追い詰めている」と実感した。

 佐藤ら、熊本県内の複数の子ども食堂主催者は今月28日、合同で子どもたちに食事を提供する「こども食堂まつり」を熊本市北区で開く。福岡の子ども食堂関係者も応援に駆け付ける予定だ。

 大人も困窮する被災地で、子ども支援にどう取り組むか。主催者たちが顔を合わせ、子ども食堂ができること、目指すことを見つめ直す意味もある。

 佐藤は強調する。「一人一人ができることは限られる。地域で困っている親子が立ち直れるよう、子ども食堂も連携して支援していきたい」

=2016/06/12付 西日本新聞朝刊=

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