現場から2016参院選(3) 大地震、災害への備え聞きたい

西日本新聞

 武雄市朝日町の民間住宅。今井清美さん(39)は猫のチョコとじゃれ合う一彩君(11)、瑠哉君(10)を見守りながらつぶやいた。「何げない日常がいかに大事だったのか、今は分かりました」

 4月14日夜、熊本市中央区の自宅にいた今井さん一家を最大震度7の熊本地震の「前震」が襲った。風呂から上がり、親子3人で寝ようと横になった時だった。ドーンと真下から突き上げる激震。余震も多発し、車で近くの店舗駐車場に避難した。同16日未明の「本震」では自宅が半壊。チョコも同居できる避難先を探し、武雄市のホームページにたどり着いて、今の住宅を見つけた。

 2人の子は武雄市の学校に慣れたが「熊本に帰って友達と遊びたい」と声をそろえる。でも、半壊した自宅には戻れない。一方で民間住宅の入居期限が来年2月に迫る。

 「この先どうしたらいいのか。まさか熊本であんな地震が起きるとは」。不安と同居の生活が続く。

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 県内でも、マグニチュード(M)7・5程度の地震発生の可能性はある。県地域防災計画は佐賀平野を東西に貫く「佐賀平野北縁断層帯」を震源としたケースで最大震度7を予測。最悪、死傷者2万人以上と想定する。ただ、大地震への備えは十分とは言い難い。

 「建て替えが必要」。1967年建設の鳥栖市役所の本庁舎は81年の耐震診断でこう指摘された。自治体庁舎は災害時に国や防災機関との情報共有、被災者救援、物資搬送、証明書発行、生活再建など、あらゆる面で最重要拠点となるが、建て替えは35年たっても手つかずのまま。予算の投入は工業団地造成や駅周辺開発などが優先されてきた。

 県内では唐津、武雄、鹿島、神埼各市なども本庁舎の耐震化が遅れている。背景には、財政事情だけでなく「県内では大地震は起こらないだろう」との思い込みも。県は政府機関の地方移転や企業を誘致する際に「地震が少ない県」をアピールしていた。

 ところが、熊本地震では県内でも4月14日に最大震度4、同16日に同5強を観測。油断を吹き飛ばした。

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 熊本地震では、県内でも大きな揺れに最大647人が自主避難した。佐賀市唐人1丁目の自営業古賀宏昭さん(51)は、児童2人を含む家族5人で近くの勧興公民館で夜を明かした。店舗2階の自宅を揺さぶられ「まさか佐賀にいて、地震で避難することがあるとは思わなかった」と語る。

 古賀さんは震災後、県内では庁舎だけでなく、避難所や校舎などでも耐震化が不十分な施設があると知った。唐人町自治会の班長を務め、まずは高齢者や障害者ら災害弱者の把握など、地域でやれることを始めようと思っている。

 ただ、住民の自助には限界がある。「ある程度は住民でカバーできるが、避難所などの整備は国や自治体の責任でやってもらうほかはない。参院選では、候補者たちから災害への備えも聞きたい」

=2016/06/17付 西日本新聞朝刊=

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