決戦の構図(下)与党の強み 奪還期す

西日本新聞

 「現職相手で大変厳しい選挙区でありますが、自民党としても立候補を決意してくれた古庄さんの勇気に応えないといけない」

 13日、大分市の中心商店街。自民新人の古庄玄知(こしょうはるとも)の応援演説に駆け付けた首相の安倍晋三は古庄の手を取って約2500人の聴衆にアピールした。「首相の人気にあやかって一気に盛り上げていきたい」。演説後、聴衆から次々と握手やハイタッチを求められる安倍の姿を見ながら県連幹部はほほ笑んだ。

 15日には、自民総務会長の二階俊博が熊本地震の影響で観光客が減少している由布市湯布院町を訪問。県や由布市の観光関係者から復興へ向けた要望を聞いた。「こういうときに役に立つ自民でなければならない。皆さんもそれを感じていただければ」。低姿勢に耳を傾けながら発した言葉の端々ににじませた「政権与党の力」。党県連幹部は「野党じゃできないことだからね。これからもどんどん来援があるよ」。参院選公示日には再び二階が大分入りすることが内定している。

 当選11回のベテランで業界団体に絶大な影響力を誇る二階は災害に備えてコンビナートや港湾を強化する「国土強靱化」の旗振り役でもある。相次ぐ来援は、製鉄、化学など大手企業のプラントが集約されている「新産都企業群」に、にらみをきかせ、民進党現職の足立信也を支える民間労組をけん制する狙いが透ける。

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 自民にとって、参院選は苦汁を飲まされてきた歴史がある。参院は3年ごとに半数が改選される。任期は6年。今回改選される大分選挙区の1議席は1998年まで議席を保持していた「指定席」のはずだった。

 ところが、二大政党化が加速する中、2004年の選挙では、民進党前身の民主党から立候補した足立に議席を奪われた。10年の改選では新人候補が約3万6千票差の接戦を演じたが、議席奪還は果たせなかった。県連幹部は「三度目の正直。今回こそ議席を取り戻す」と鼻息を荒くする。

 高い支持率を維持する安倍の人気を追い風にしながら、政権党として利益誘導をちらつかせて圧力をかける-。自民県連は、硬軟織り交ぜた戦術で悲願の議席奪還を期す。

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 挑戦者として攻勢をかける古庄だが、不安材料もある。12日、大分市で開かれた集会。古庄は「フルショウではなくコショウです。ぴりっと辛い古庄をよろしくお願いします」と名前の売り込みに懸命だった。昨年9月に公募で立候補予定者となり、県選出の国会議員と共に支持者回りを重ねてきたが、「まだ露出度が足りない」(陣営幹部)。

 足立陣営の「野党共闘」を見据えて、自民県連が初めて公明比例代表候補を推薦した「与党結束」についても、自民の支持団体には自前の「組織内候補」を抱えている団体が多く、公明との「バーター」がもくろみ通りに機能しない可能性も残る。

 参院選の1人区で九州唯一となる野党の議席を奪えるか。大分の決戦は全国情勢を左右する32の1人区の象徴として注目される。 =敬称略

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 ■立候補予定者

古庄 玄知58弁護士      自 新 (公推)

足立 信也59元厚生労働政務官 民 現
上田 敦子49幸福実現党員   諸 新

=2016/06/18付 西日本新聞朝刊=

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