「信問う」首相の真意は 「覚悟」を強調?

西日本新聞

 参院選で国民の信を問いたい-。安倍晋三首相は1日の記者会見で「国民の信を問う」を連発した。2017年4月に予定していた消費税率引き上げを再延期する是非について、参院選の投票で判断してほしいという意味のようだ。「信を問う」は政権選択の衆院選で使うのが一般的。参院選前に首相が口にするのは珍しい。首相の「信を問う」を考える。

 高千穂大の五野井郁夫教授(政治学)によると、「信を問う」が最初に使われたのは1948年の参院本会議。佐々木良作参院議員が片山哲内閣に「総辞職を敢行して国民に信を問うたらどうか」と質問した。

 その後、政府方針と世論が懸け離れている場合や国論を二分する事態に「内閣総辞職か衆院解散を行い、国民に信を問うべきだ」と使われるようになった。野党が「信を問え」と迫ることもあれば、首相が「信を問う」と衆院解散に打って出ることもある。

 安倍首相は14年11月、消費税増税の延期と衆院解散を表明した記者会見で「国民生活に大きな影響を与える税制で重大な決断をした。国民に信を問うべきだ」と述べ、解散の妥当性を強調した。

 首相は今回「再び延期することはない」と断言した14年の方針を転換した。再延期に反対した麻生太郎財務相は「衆院を解散して信を問うべきだ」と首相に進言した。

 だが、首相が「信を問う」のは参院選。「国民生活に大きな影響を与える税制で約束してきたことと異なる判断を行うのであれば、国民に審判を仰いでから実行すべきだ」と、14年と同じような言い回しで理解を求めた。衆院選ではなく参院選で信を問う理由は「同じ国政選挙」と説明しただけだった。

    ◇      ◇

 信を問う以上、避けて通れないのは「結果責任」。衆院の多数派が選んだ首相が政権を担う議院内閣制では、過半数の議席が取れないと退陣につながる。14年の衆院選で首相は「過半数が得られなければ退陣する」と明言した。

 参院選に向け首相は「与党で改選議席の過半数」を勝敗ラインに設定したが、達成できない場合の責任には触れていない。菅義偉官房長官は「獲得できないことは考えていない」と強気だ。参院選を政権に対する中間評価の選挙ととらえる本音が垣間見える。

 首相は第1次政権の07年参院選で惨敗し、政権を立て直せないまま退陣した。1日の記者会見では「あのときの挫折は今も私の胸に深く刻み込まれている」と吐露した。参院選に強いこだわりがあり「信を問う、と強い言葉を使うことで覚悟を伝えたかった」。官邸筋は解説する。

 そうであるなら、結果責任から逃れられない。

=2016/06/21付 西日本新聞朝刊=

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