現場から2016参院選(8) 消費増税、再延期歓迎、将来は不安

西日本新聞

 「今の消費税に合わせても端数が出るだけ。発売当初の価格で販売している」

 佐賀市の白山名店街で書店を営む松原良治さん(76)は本棚から複数の書籍を取り出した。一冊、一冊にかつての消費税率「3%」「5%」の税込み価格や税別価格が付いている。これを当時の税込み価格のままで売り、今の8%との差額分は自己負担しているという。

 「仮に10%に上がっても在庫分は当時の価格で売るつもりだ」

 安倍晋三首相は1日、来年4月の消費税率10%引き上げを2019年10月まで2年半延期すると表明した。14年11月に当初予定の15年10月から1年半延期した際には「再び延期することはない」と断言していたが「アベノミクスの加速」を理由に取り消した。

 松原さんは「アベノミクスは、私たちのような零細企業には届いていない。消費税が上がると売り上げは落ちる。再延期は助かった」と歓迎する。

 一方でこうも語る。「国の財政再建が遅れると、社会保障や年金にしわ寄せがくる。この年になると、不安なことも多い」

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 子育て世代の思いも複雑だ。吉野ケ里町上豆田の主婦古本未来さん(31)は、4歳の長女と2歳の長男を育てる。消費税率が5%から8%に上がる前に駆け込む形でマイホームを購入。22年のローンが残る。

 「8%への引き上げだけでも家計への影響は大きかった。食費や子どもの洋服、おむつ代などがかさんだ」と増税再延期に賛成だ。それでも「将来へのツケを考えると増税は必要なのかもしれない。しっかりと説明してくれる人がいれば違うかも」と心は揺れる。

 20年後は子どもが大学に通う年齢になり、親も70代。「介護費や教育費に加え、自分たちの老後も考えなきゃいけない。どうなるんだろう。だけど、今は家計のことで頭がいっぱい」

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 政府は民主党(現民進党)政権時代から、消費税率引き上げ分は社会保障の安定財源にすると公約してきた。それだけに福祉の現場では不安の声を聞く。

 手取りで月給約13万円というみやき町の男性保育士(38)は「保育士の賃金引き上げの話はどうなるのか。財源はどこから持ってくるのか」と心配する。

 多久市南多久町長尾の大坪ひとみさん(43)が働く市内の保育園は、約100人の園児に対して保育士16人。仕事量の多さに見合わない低給与を理由に辞めていく若手職員もいるという。「保育士の仕事はきついというイメージばかりが先行している。応援してくれるような政策や保障が必要」と訴える。

 ただ、消費税増税については野党も反対していたため、参院選の争点から外れた。暮らしに直結する社会保障の課題も各党が充実や処遇改善をうたい、違いは見えにくい。与野党の主張はアベノミクスが「道半ば」なのか「失敗」なのかの評価が焦点で、県内では多くの有権者に実感がない。

 =おわり

=2016/06/22付 西日本新聞朝刊=

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