地域の視線(4完) TPP 不安と期待が渦巻く

西日本新聞

 「今年は特にひどか。死活問題です」。諫早市川内町の干拓農地で農業中島康範さん(51)は、収穫されずに野ざらしになったタマネギを厳しい表情で見つめた。

 今年は生育不良を招く「べと病」が流行。3月に県内に注意報が発令され、4ヘクタールでタマネギを栽培する中島さんの農地でも被害が出た。収穫したタマネギは丁寧に一つずつ病気の発生がないか目を光らせねばならない。作業のため、増える人件費に頭を痛める。

 昨年10月、農産物を含む関税撤廃を目指す環太平洋連携協定(TPP)が大筋合意。政府は発効による国内農林水産物の生産減少額が最大2100億円と試算したが、「過小評価」と批判が相次いだ。熊本地震の発生もあり、承認案や関連法案は継続審議となった。

 TPP発効で関税が撤廃されれば、価格競争力のある外国産が国内の市場を席巻する恐れがある。「今を生きるか死ぬかで精いっぱいなのに、利益が出ずに農業をやめるところも増える」と中島さん。

 TPPを意に介さない農家も。2014年10月から香港にホウレンソウやコマツナなどを輸出する田中農園(島原市長貫町)の田中孝代表(62)は「海外で売れるなんて思ってなかった」と表情は明るい。

 有機肥料を使い、収穫後から運送まで低温を保ち鮮度を保つ。価格は跳ね上がるが、日本産ブランドは安全な食品の代名詞とあって現地での人気は根強い。

 田中代表は人口減で国内需要が先細る中、18年前に現法人を設立し輸出の道を模索。現在、約5ヘクタールで育てる葉物野菜の総売上のうち海外の販売額は3~4%。今後はシンガポールへの輸出を視野に入れる。将来、外国産との競争になっても、「目標をいかに掲げるか。意識次第で道は開ける」とみている。

 政府が目指す「強い農業」をどう実現するのか、農業者たちは注視している。

 =おわり


=2016/06/17付 西日本新聞朝刊=

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ