改憲 首相一言も触れず 共闘野党「争点隠し」

西日本新聞

 憲法改正に前向きな勢力が、国会発議に必要な3分の2以上の議席を獲得するかどうかが焦点となる参院選。選挙戦初日の日、安倍晋三首相の演説から「憲法」は聞かれなかった。民進党の岡田克也代表や共産党の志位和夫委員長は「争点隠し」と批判し、改憲阻止を争点に論戦を挑む。

 熊本城(熊本市)の崩れかけた黒い城壁を背に、首相は第一声を上げた。約8分半の演説で憲法には一言も触れなかった。

 首相は8日から全国遊説を始め、四十数カ所の街頭で演説したが、憲法改正に言及していない。22日のNHK番組で「(改憲条文は衆参両院の)憲法審査会で真剣に議論する。(議論の)集約がないのに、選挙で争点にするのはおかしい」と理由を説明した。

 公明党の山口那津男代表は、さいたま市内の街頭演説の最後に憲法に触れた。「国会で十分な議論もできず、皆さんに選択肢を示す状況には至っていない」。与党は争点を「アベノミクスの是非」に絞ることで足並みをそろえる。

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 首相は年頭会見で、改憲が参院選の争点になると明言した。1月の参院決算委員会で「どの条項を改正するか、新たな現実的な段階に移ってきた」と強調。3月の参院予算委員会では「在任中に成し遂げたい」と強い意欲を示した。

 だが、参院選が近づくにつれて発言を抑制する。自民党の公約は憲法改正について「国民合意の形成に努め、実現を目指す」と末尾に記しただけ。首相は2012年の自民党憲法改正草案を「たたき台」と位置付け、他党との議論に柔軟に応じる姿勢も示した。

 首相の言動の変化を二階俊博総務会長は「自民党が先頭に立って憲法改正に旗を振る姿勢を示したなら、選挙に勝てないということだ」と解説する。

 具体的な改憲条項に踏み込めば、自公の意見の相違を露呈しかねない。首相は9条改正を宿願とするが、山口氏は「政府のこれまでの考え方を守っていくべきだ。平和安全法制はそのために憲法解釈を変えた」と否定的な立場。自民党が改憲の「入り口」とする緊急事態条項や環境権の創設を巡っても、両党の考えは一致していない。

 改憲を争点にすれば「野党に攻撃材料を与えるだけだ」と自民関係者は話す。

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 「こんなやり方は、3度目は通用しない」。志位氏はJR新宿駅前で拳を振り上げ、与党の「争点隠し」を批判した。

 安倍政権は13年の参院選と14年の衆院選で経済政策を争点に勝利し、選挙が終わると、特定秘密保護法や集団的自衛権の行使容認などの重要政策に着手した。

 JR甲府駅前でマイクを握った岡田氏は「3分の2の議席を許せば、首相は必ず憲法改正をやってくる。9条だ」と危機感をあらわにした。アベノミクスの陰に潜む「改憲の兆し」を有権者に訴える。

 「3分の2阻止」は野党4党の共通目標だが、民進は「未来志向の憲法を国民とともに構想する」と公約しており、改憲そのものを否定する共産とは基本姿勢が異なる。統一候補の擁立に当たり、両党で一致したのは「安倍政権での改憲は許さない」との方針。安倍首相が退陣すれば、民進が改憲論議に参加する可能性は否定できない。

 自民、公明におおさか維新の会、日本のこころを大切にする党を加えた改憲勢力が78議席を獲得すれば3分の2に届き、改憲への動きが具体化する。では、首相は憲法のどこをどう変えようとしているのか。選挙戦で有権者に判断材料が示される見通しはない。

=2016/06/23付 西日本新聞朝刊=

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