与野党の論戦スタート 九州各地、白熱とすれ違い

西日本新聞

 連立与党に野党がかつてない共闘態勢で挑み、火花を散らす参院選。九州各地の論戦ではアベノミクスや安全保障関連法を巡る対立軸が鮮明になる一方、憲法改正や脱原発の是非では与野党の思惑が表面化し、世論をにらんだ駆け引きも浮かんだ。

 大粒の雨がアーケードの屋根をたたく大分市中心部の商店街。大分選挙区の自民新人が叫んだ。「20年間、日本はデフレ状態が続いた。安倍政権になり、ようやくそこから脱却しつつある。景気回復の足を止めるわけにはいかない」

 同じころ、JR大分駅前では民進現職が安倍政権を指弾した。「この3年半、一部の輸出企業がもうかればみんな幸せになるという幻想に踊らされてきた。アベノミクスの失敗を世界が認めている。格差の拡大が経済成長の足を引っ張っている」

 各種の経済指標が上向く一方、景気回復の波が家計に届いているとは言い難い。アベノミクスの継続か、転換か。与野党の主張はぶつかり合う。

 3月に施行された安保関連法を巡っても対立軸は鮮明だ。

 全国32の「1人区」でいち早く野党共闘が成立した熊本選挙区。無所属新人は「日本の平和とは全く関係ない外国に自衛隊を送り、人殺しをさせる。この国を恨みと報復の連鎖に巻き込んでいく法律だ」と廃止を訴えた。

 一方、熊本を第一声の地に選んだ安倍首相は北朝鮮のミサイル発射に触れ「平和安全法制の成立で、日米が今まで以上に連携して対応することができた」。自衛隊に対する野党間の見解の相違を指摘し、共闘にくさびを打ち込むことも忘れなかった。

   ◇   ◇

 初日の論戦では、重要課題にもかかわらず、与野党が触れたがらない事情と思惑も透けた。

 「安倍首相は憲法を変えようとしている、止めてほしいという声がたくさん寄せられている。立憲主義を取り戻そう」。福岡選挙区の共産新人は福岡市のJR博多駅前でこう強調した。民進新人も第一声で、憲法が保障する表現の自由について「だんだんものを申せない雰囲気になっていないか」と問いかけた。

 改憲は自民の党是。参院選の結果次第では大きく動きだす可能性がある。だが、九州の自民候補者は誰も第一声で改憲に触れなかった。世論をにらんだ戦略が浮かぶ。

 全国で唯一稼働する九州電力川内原発のある鹿児島県薩摩川内市。鹿児島選挙区の自民現職は同市の公園で「(再稼働は)原子力規制委員会が時間をかけて出した答え。いちいち政治が介入しだしたらおしまいだ」と強調。「専門家でない人が『危ない』『危なくない』というのは無責任」と反原発派への対抗心をむき出しにした。

 ところが、原発ゼロを訴える野党を含めた統一候補の無所属新人はこの日、原発に触れずじまい。陣営幹部は「反原発派から九電労組まで支援者はさまざま。触れられるわけがない」と自嘲気味に話した。

=2016/06/23付 西日本新聞朝刊=

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