託す~被災地から 子育て支援 響かぬ公約 益城の母親「子どもの未来のために」

西日本新聞

 「大きな赤ちゃんだ」。新たな命を腕に抱き、優しくほほ笑みかけた。23日未明、熊本県益城町の岡村志保さん(42)は、第2子を出産した。3708グラムの男児だ。

 妊娠8カ月。激震に見舞われ、自宅が半壊した。近くの避難所に足を運び、妊婦が過ごすのは無理だと思った。トイレ待ちの長い行列、感染症の心配。妊婦に配慮する避難所もあると聞いたが、場所が遠かった。友人宅に身を寄せ、車中泊もした。おなかは日に日に大きくなり、横になるのもやっと。不安だった。

 陣痛と同じ日に参院選が始まった。少子化対策、子育て支援、待機児童解消-。選挙のたびに各党がそろって公約に掲げるものの、実感は乏しい。パート勤務をしていて、長女(5)は保育所に通う。でも入れたくても入れない待機児童が全国に約2万3千人、町内にも約80人いると聞いた。

 各地で保育所の新設計画が近隣住民の反対で頓挫している。「保育園落ちた日本死ね」。匿名ブログの過激な言葉は乱暴だとは思うけれど、リアルな親の気持ちを映していると思う。

 長女をベビーカーに乗せて買い物中、すれ違った人に「邪魔だ」と言われたこともある。子育て世代が肩身の狭い思いをしている社会って何だろう。いずれ、年金や医療など超高齢社会を支える世代なのに。

 震災から2カ月余り。出産の喜びと先が見えない不安が交錯する。26日に始まる仮設住宅の2次募集も、申し込みが殺到しそうだ。半壊の自宅は水がちょろちょろしか出ない。家族の炊事や赤ちゃんの入浴は…。

 町内も選挙カーが走り始めた。託すなら「子どもたちの未来のためになる政治家」に。母の指をぎゅっと握る小さな手を見つめながら、そう思わずにはいられない。

=2016/06/24付 西日本新聞朝刊=

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ