託す~被災地から 「上から目線福祉」違和感 西原村の難病男性

西日本新聞

 しっくりこない。「福祉向上」「弱者支援」。定番のキャッチフレーズのような公約を、今回の参院選でも耳にする。上から目線というか、哀れみを含んでいるというか。

 ハンチング帽に、鋭い眼光。熊本県西原村の自営業鈴川将司さん(42)は、手足の筋肉が衰える難病「シャルコー・マリー・トゥース病」のため、6年前から車いすを使っている。地震で自宅は全壊した。飼い犬がいるため、避難所近くで車中泊を続ける。

 最近、16年間も控えていた酒を飲み始めた。ストレス解消のためではない。「ここには、飲み交わしたい人たちがいるから」。全国から集まる災害ボランティアなどと杯を傾け、親交を深める。

 もともと政治や行政の世界で語られる「福祉」という言葉に違和感があった。避難所の村民や支援者は、そんな言葉を使わなくても自然と支え合う。それが現場から遠くなるほどずれていく。近く入居する仮設住宅は県が整備した。玄関先にスロープを付けてくれたのはいいが、車いすで上るには傾斜がきつい。

 4月の障害者差別解消法施行後、国会で気掛かりな“事件”が起きた。衆院が5月、全身の筋肉が徐々に動かなくなる筋萎縮性側索硬化症(ALS)の男性の参考人質疑出席を「やりとりに時間がかかる」と拒んだ。批判を受けて参院は出席を認めたが、立法府が法の精神を踏みにじるとは-。「制度をつくれば、それで終わりのつもりなのかね」

 震災後、村職員たちを見る目が変わった。四角四面で冷淡な窓口対応をしていた職員たちが、被災者の支援に奔走している。救いの手を必要としている人たちとじかに触れれば、傍観者ではいられないのだろう。信じられるのは「言葉より行動」。政治家にも同じことが言える。

=2016/06/25付 西日本新聞朝刊=

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