【つくられた貧困】最低賃金を時給1000円に 大戸はるみ・NPO法人理事長

西日本新聞

 30年近く、ひとり親の相談に乗っている。親の8割が働いているのに貧困から抜け出せないのは、賃金が安すぎることが大きい。

 結婚で仕事を辞めて家庭に入った人は、離婚後に小さな子どもを育てながら職探しをすると、ほぼ非正規しか求人がない。子どもの世話ができる条件を優先すると仕事が限られるからだ。最低賃金(福岡県は時給743円)に張り付いた時給750円の店員などが多くなる。

 時給750円で1日8時間、月25日働いたとしても月給15万円。税金や社会保険料が引かれ、児童扶養手当などを足しても月15万円ほどで生活する。そんな家庭が多い。

 私が4歳の娘を連れて離婚した約30年前はまだ、事務職でも正社員の求人があった。私も正社員で、子どもが高校、大学とお金がかかる時期に向けて少しずつだが貯金もできた。

 そうした事務職が、今はパートや派遣社員に置き換わっている。親族と疎遠で助けを求められない場合は親1人の肩にかかってくる。少しでも収入を増やすためダブルワーク、トリプルワークとなり、疲労の限界を超えて、うつになってしまう人もいる。

 最低賃金をせめて時給千円にするべきだ。経済的、精神的に少し余裕ができ、仕事を詰め込む必要も薄れる。子どもに向き合う時間もできるだろう。

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 加えて、もし親が体を壊して収入が減ったとき、家計の不足分を補える給付金があれば助かる。「ぎりぎりまで頑張って駄目になったら生活保護」ではなく、間にワンクッションあった方が子どもへの影響も少ないし、結果的に国の負担も減るのではないか。

 1人目の子どもに月4万2330円支給される児童扶養手当があるが、働いて収入が増えると減額される仕組みだ。法改正で今年8月から2人目が5千円から最大1万円に増額されるなど改善がみられるが、子ども1人の家庭が5割超で、広くは行き渡らない。

 子どもへのサポートも求めたい。ひとり親は時間的に子どもの勉強を見てやれない場合が多い。子どもは分からないところが積み重なって学校が面白くなくなり、その延長線上に不登校や中退があることを考えれば、早い時期からの学習支援が有効だ。貧困の連鎖を絶つことにもつながる。

 日本ではしつけや教育は「家庭の責任」で、特に母親が負わされているところが大きい。ひとり親への視線はなおさら厳しい。最も必要なのは、子どもを社会全体で守り育てる意識だと思う。

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 厚生労働省の2015年のまとめによると、母子家庭の母親の81%、父子家庭の父親の91%が働いており、平均年間就労収入はそれぞれ181万円、360万円。一般的な平均給与所得(女性269万円、男性507万円)を大きく下回る。12年国民生活基礎調査では、母子家庭の平均年間所得(手当、養育費などを含む)は250万円で、子どものいる全世帯平均697万円の3分の1だった。

 子どもの大学進学率は、全家庭平均が53.7%なのに対し、ひとり親家庭は23.9%で、経済的な厳しさが影響しているとみられる。福岡市ひとり親家庭実態調査(11年)によると、悩みや不安について、母子家庭の3分の2、父子家庭の半数が「生活費」と答えている。

=2016/06/25付 西日本新聞朝刊=

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