託す~被災地から アベノミクス空吹かし危惧

西日本新聞

 英国の欧州連合(EU)からの離脱決定で政府、日銀が緊急会合を開いた27日、熊本県御船町商工会でも中小企業にとって重要な会合が持たれた。熊本地震の被災事業所を対象にした補助金の説明会。

 「資料25ページ。復興事業計画の認定申請書の書式ですが…」。担当者の説明を、町内で工場を営む男性(40)はペンを動かしながら熱心に聞いていた。

 男性の会社は、同県大津町のホンダ熊本製作所に二輪部品を納める孫請け。二輪の輸出先は北米や欧州などで、安倍晋三政権の経済施策「アベノミクス」がもたらした円安の下で安定した受注が続いてきた。そこに地震が起きた。工場兼事務所が被災、修繕に数千万円かかるかもしれない。

 想定するのはグループ補助金。複数の中小企業が連携して事業計画を進める場合に支給される。1社当たり15億円が上限で、東日本大震災後に設けられた。復旧費の4分の3を国と県が負担する。

 「補助はありがたい。ただ、この円高が続くと、親会社の生産計画が縮小しないか心配だ」。男性の頭をよぎったのは市場の動き。この日、円相場は1ドル=102円前後で推移した。エコノミストの多くは円高は一時的なものではなく、当面続くと予想する。輸出企業への打撃が現実味を帯びる。

 金融緩和と財政出動のカンフル剤で、世界の投機マネーが引き起こす円高、株安を食い止められるのか。「アベノミクスのエンジンを最大限吹かす」。首相の言葉に期待を寄せる男性だが、それが「空吹かし」に終わる不安もある。

 「まずは復旧。復興はさらにその先の話」。正念場を迎えるアベノミクス。世界経済の動きに気をもみつつ、目の前のことに向き合うしかない被災企業の現実がある。

=2016/06/28付 西日本新聞朝刊=

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