【食の力】だし極める「ソムリエ」講座 多様なうま味 基本から

西日本新聞

 ソムリエは、レストランなどで客の要望に応じてワイン選びを手助けする専門職のこと。幅広く、かつ深い知識が求められる。同様に料理の土台となる「だし」の知識を持った専門家を育てているのが一般社団法人「だしソムリエ協会」(東京)だ。協会の認定講師が福岡市で開いた、だしソムリエ講座を訪れた。

 この日はだしの基本、昆布や煮干しといった素材の製造法、だしの取り方などを学ぶ3級講座。会場の博多駅そばのシステムキッチンショールームには福岡、佐賀両県、それに広島市の計6人が集まった。だしに興味があるという主婦や、総菜店を展開する会社の新規事業担当の女性に交じって公務員の男性の姿も見える。

 「まずテイスティング(味見)です。6種類を味わってみてください」。だしソムリエの吉田亜暉代(あきよ)講師(50)=福岡市=が勧めた。小さなコップに入っただしの色、味、香りをチェック。透明感のある黄色、濃い茶色、濁っているなど、それぞれ特徴がある。かつお節、煮干し(カタクチイワシ)、昆布、干しシイタケ、野菜、顆粒(かりゅう)だしと答え合わせしながら、違いを確かめる。「野菜はセロリ、玉ネギ、ニンジン? こんなに甘いんですね」。意外な発見に受講生がうなずき合う。

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 協会を設立したのは鵜飼真妃代表。乾物の卸業を営む家で育ち、出版社勤務やフリーライターを経て2010年3月、「正しいだしの知識を多くの人に知ってほしい」と発足させた。

 現在、九州には3級講座を自主開催できる認定講師が3人(全国では約20人)。その資格は2級、1級を取得した後、講師養成コースを受講して得られる。だしソムリエ(1~3級)は全国で約1500人。料理家や飲食店関係者も多く、料理の幅を広げるなど資格を生かしているという。
 協会の基準による「だし」は乾物、野菜、肉類、魚介類などの天然素材を煮込んだり炒めたりして、うま味を引き出したもの。和食だけでなく中華やフランス料理のベースもだしと位置づける。調味料やうま味調味料は「だし関連商品」と呼ぶ。

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 約4時間にわたる講座の佳境に入る。昆布に含まれるグルタミン酸、かつお節や煮干しのイノシン酸、シイタケのグアニル酸という、うま味成分三つを教わり、混ぜ合わせる。1+1=2ではなく、7にも8にもなる相乗効果も実感してもらう。さらに、あご(トビウオ)、産地の異なる昆布も加え、微妙な違いも確認する。「昆布の風味と味は混ぜることでくっきりする」と驚きの声も上がった。

 講座では知識だけでなくレシピ作りの課題も出る。「基本を理解した上で自分の味を作り出し、食を楽しむ人を増やしたい」と吉田さんは強調した。

 受講生は最後に筆記と味見の計30分の試験を受けた。合否は約1カ月後に分かる。ネットで講座を知った広島市の主婦(34)は「成分や味の違いなどをまとめて知ることができて有意義だった」と満足そう。食品会社に勤める女性(36)=佐賀県鳥栖市=も「素材に手間をかけておいしく食べたい。きちんと伝える人がいないと、その土台となるだしが無くなってしまう。これから実践して伝えたい」と話した。

 協会を設立する前、鵜飼さんは「だしの情報量の少なさ、関心の低さに驚いた」という。現在は和食の無形文化遺産登録もあって注目度は増している。「だしは大切に扱えば新たな発見がある。生活も豊かになる」と鵜飼さん。豊かさを実感するきっかけを提供してもらえるなら、だしソムリエの活躍の場も増えていくだろう。 


=2016/06/29付 西日本新聞朝刊=

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