託す~被災地から 復興支援と就活両立 政治スローガン化に疑問

西日本新聞

 その名も「熊助組(くますけぐみ)」という。熊本大(熊本市)で防災などを学ぶ学生が2007年に立ち上げた災害復旧支援グループ。熊本地震の前震が起きた4月14日夜、「熊助組」代表の大学院2年太田光さん(23)はキャンパスに駆け付けた学生たちと誓い合った。「できることからやろう」。自分の就職活動どころではない。そう思った。

 学内の体育館に身を寄せた住民の誘導を手始めに支援物資が集まる熊本市内の拠点施設に学生を送った。「人手は足りますか」と被災自治体に電話を入れる。震災前から関係機関と連携し、ボランティアセンターの設置訓練を重ねるなどした事前準備が生きた。

 福岡県中間市出身。11年の東日本大震災直後、熊本大工学部に入学した。津波や高波のメカニズムを研究する海岸工学を専攻し、大学院へ。研究に没頭する一方で、12年の九州北部豪雨では福岡県八女市などで支援活動をした。

 この間、政治は大きく転換した。「コンクリートから人へ」の民主党政権から「国土強靱(きょうじん)化」の自公政権へ。防災や減災対策を含む公共事業のあり方が両極端に振れ、政治スローガンとして語られることに違和感もある。

 津波被害を防ぐため、擁壁のような防潮堤を日本中の海岸線に築くのは非現実的だ。一方で、防潮堤には住民の避難時間を稼ぐ効果がある。「ハードとソフト、地域の地理的特性などに応じた複合的な対策が必要だ」。研究者の冷静な視線は、公共事業を無駄削減や景気浮揚に絡める政治の思惑と一線を画す。

 就活はこれからが本番。「迅速な復旧が被災地の命と暮らしを守ることを実感した」。道路舗装大手の技術者を目指す。作業着をスーツに着替えて会社訪問へ。被災市町村の活動予定を書き込んだボードが並ぶ「熊助組」控室を拠点に、慌ただしい日々が続く。

=2016/06/30付 西日本新聞朝刊=

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