託す~被災地から 教育「百年の大計」遠く

西日本新聞

 「人ごとじゃない」。熊本市の中学に勤務する男性教諭(32)は思った。6月中旬、同じ1年の別クラスを担任している同僚が心の病と診断され、休職することになった。熊本地震の影響か、生徒たちが落ち着かず、学級崩壊になったと聞いていた。

 地震発生は入学式の3日後。生徒や保護者の顔と名前も一致しないまま1カ月近く休校になった。信頼関係を築くのも、授業も、ゼロからのスタート。「みんな、ぎりぎりの状況」。そう感じている。

 「日本の先生は世界一、忙しい」。経済協力開発機構(OECD)の調査結果が話題になったのは2014年。中学教師の勤務時間(1週間)54時間は、34カ国・地域で最長だった。

 驚きはない。午前7時すぎに出勤し、担当科目を1日5コマこなす。授業の合間や給食の時間に、テストの採点をしたり、生徒の日記に目を通したり。放課後は顧問をしているサッカー部の練習、翌日の授業の準備に追われ、校門を出るのは午後9時すぎだ。

 土日も部活があり、丸1日休めるのは月1日だけ。ほとんどの同僚の残業時間は、本人が申し出れば医師との面談が必要になる月100時間を超すはずだ。でも申し出ることはない。「それが当たり前と感覚がまひしてる」

 文部科学省が教職員の負担軽減策を検討する一方、財務省は昨秋、少子化を理由に教職員数を24年度までに3万7千人減らす試算を示した。国内総生産(GDP)に占める公的教育支出の割合は先進国の中で最低水準。参院選で与野党こぞって給付型奨学金の創設など教育の充実を訴えるが、選挙向けのアピールだけに終わらせてほしくない。教育は「国家百年の大計」なのだから。

 男性教諭の勤務校。30日も夜遅くまで、職員室には明かりがともっていた。

=2016/07/01付 西日本新聞朝刊=

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ