憲法論戦深まらず 有権者の関心も「景気」

西日本新聞

 今回の参院選は安倍晋三首相が「悲願」としてきた憲法改正の行方が最大の焦点。自民党を中心とする改憲勢力は発議に必要な3分の2以上の議席到達を目指すが、有権者の賛否が分かれる問題だけに多くは語っていない。憲法を巡る論戦は選挙戦中盤に入っても低調気味。識者は「国民に判断材料を提供するためにも論じ合うべきだ」と話す。

 「父から有望な若者がたくさん亡くなったと聞きました」。両翼12メートル、全長10メートルの零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の復元機を見詰めて、板金塗装業の馬場憲治さん(67)=神埼市神埼町尾崎=はこうつぶやいた。

 父は旧日本海軍の整備工だった。供養できなかった戦友や戦中戦後の食糧難をよく話していたという。

 馬場さんは平和の尊さを伝えたいと、自ら造った復元機を職場の工場に飾っている。「改憲に反対。不戦を誓った9条は守るべきだ」。参院選については「国民が憲法について考えるいい機会。白黒をつけるわけではないが、活発な議論を聞きたい」と話す。

 「戦後70年が経過し、矛盾がある。時代に沿った憲法に変えた方がいい」。佐賀市本庄町本庄の会社員弥吉博幸さん(54)は新憲法制定を掲げる団体「日本会議佐賀」のメンバーとして、月1回の勉強会に参加している。

 弥吉さんは「1票の格差」是正のため、人口の少ない隣接選挙区を統合した参議院の合区が佐賀にも拡大しないか懸念する。「地域の代表である国会議員を減らさないように改憲すべきだ」と考えている。

 憲法9条2項で軍隊を保持しないと定めていることにも「自衛隊は軍隊として認められていないが、実態は違う。大事な問題だから正々堂々と候補者には議論してほしい」と語る。

 ただ、有権者の憲法への関心は、経済や身近な暮らしの問題に比べると高いとは言い難い。

 西日本新聞の参院選佐賀選挙区(改選数1)での期日前投票出口調査(6月30日現在)では、最も重視する政策に「憲法改正」を選んだのは272人のうち11人。「高齢者・障害者福祉」70人や「景気・雇用対策」91人と比べると、大幅に少なかった。

 立候補者3人の考えは、自民現職の福岡資麿氏(43)が参議院改革を念頭に「必要」との立場。政治団体「幸福実現党」新人の中島徹氏(42)は自衛隊の存在を明確にするために9条改正が「必要」と主張。民進元職の中村哲治氏(44)は「時代に合わせた改正は必要」とする一方、自民党が憲法改正草案に掲げた緊急事態条項は不要とする。

 佐賀大経済学部の児玉弘准教授(公法学)は「最高法規の憲法は生活と深く関わる。改正が必要なら、立候補者は憲法が抱える矛盾や問題点を語り、国民の信頼や理解を得るべきだ。有権者も投票の判断材料を持つために勉強してほしい」と話す。

=2016/07/02付 西日本新聞朝刊=

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