託す~被災地から 次世代憂え孫へメール

西日本新聞

 投票に足を運ぶ人が途切れると、時間がたつのがなおさら遅く感じる。熊本県大津町の自営業、山本セツさん(72)は、参院選の期日前投票所で立会人を務めている。かれこれ5年、国政選挙、地方選挙の投票風景を見つめてきた。

 熊本地震発生から2カ月余りで迎えた選挙戦。「今回は、ちょっと出足が悪いような」。町選挙管理委員会によると、2013年参院選の同時期に1362人だった期日前投票者は、今回979人。まだ自宅の片付けなどに追われている人も多い。投票どころではないのだろうか。

 いつもと違う雰囲気が投票所を包んだ。山本さんは1日、町内の県立高校に設置された臨時の期日前投票所のパイプ椅子に座っていた。初めて1票を投じる18歳たち。「少し大人になった気分。政治に期待するのは、熊本の復興です」。報道陣の取材に直立不動で答える制服姿に目を細める。

 脳裏に8人の孫たちの顔が浮かぶ。歯止めがかからない少子高齢化。高齢者の年金や医療を支える世代はますます先細る。参院選を前に安倍晋三首相は、消費税率を10%に引き上げる増税の再延期を表明した。税率1%当たりの税収は2兆円台後半とされる。

 保育士や介護従事者の待遇改善、給付型奨学金創設、そして震災復興…。公約実現に必要なお金をどう手当てするのか。結局、子孫の世代に借金のつけが回るのではないか。不安は尽きない。

 「投票に来る人、少なかったですね。もっと告知をしないと」。1日夕、立会人と町選管職員たちは町役場でささやかな反省会を開いた。山本さんは自宅に戻ると、熊本市に住む大学2年の孫(19)にメールを送った。「初めての選挙だから、必ず投票に行ってね」

=2016/07/02付 西日本新聞朝刊=

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