判例「時代錯誤」悩む現場 親元離れた学生投票できず 識者「国は統一指針を」

西日本新聞

 住民票を実家に残したまま引っ越せば、投票は旧住所地でも認めない-。こう判断する自治体の根拠は「親元を離れて居住する学生の住所は下宿先」とした62年前の最高裁判例を受け、本当に住んでいるかどうかを重視するものだ。交通網が発達し“実家に帰る”のが容易な今、「時代錯誤では」との声も漏れる。国は選挙人名簿登録した人の居住実態の調査を自治体に求めているものの、人員や財源不足などの限界がある。

 最高裁判例が出た1954年は、実家と下宿先に明確な線引きがあった時代だった。山陽新幹線も開業しておらず交通の利便性が悪く、帰省に数日を要することも。大学進学率は7・9%と、下宿する学生自体も極めて少なかった。九州のある市選挙管理委員会の担当者は「今は日帰りで帰省もできる。親元に住所地があるのを『居住実態がない』とは、言い難いのでは」と疑問視する。

 選挙人名簿登録者の調査について総務省は4月、各都道府県選管に通知。ただ「生活実態があるかの判断は各自治体選管に委ねる」としたため、結果的に自治体により新有権者の投票の可否が分かれ、「不平等」が生じている。

 住民票がある場所に若者が本当に住んでいるか-。こうした調査を行ったのは人口1万人未満の小規模自治体が大半だ。北海道足寄(あしょろ)町は52人(18、19歳)の住所を1軒ずつ確認した上で「居住実態がない」として選挙人名簿に登録しなかった。一方、100万人以上の有権者を抱える福岡市をはじめ、人口規模が大きい九州7県の県庁所在市・政令市は「現実的ではない」といずれも調査していない。

 選挙制度に詳しい松本正生埼玉大教授(政治意識論)は「国政選挙で投票の可否が自治体によってばらつくのは問題だ。若い有権者が権利を行使できるよう、国が統一の指針を示すべきだ」としている。

=2016/07/05付 西日本新聞朝刊=

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