「女性は時間なく 男性は居場所なし」 社会的役割見直しを 社会学者 水無田気流さん講演

 日本社会の生きづらさに光を当てる詩人で社会学者の水無田気流(みなしたきりう)さんが6月、福岡市内で講演した。誰もが幸せに生きられる社会を目指す上で、「時間」のない女性と「居場所」のない男性、二つの「貧困問題」が障壁となっていると語った。

 「女性は今、日本の難問解決のために活躍し、輝くことが期待されている」
 難問とは、労働力不足や少子高齢化。だが水無田さんは、女性が社会で活躍するにはあまりに「時間」ないと指摘する。

 総務省の調査によると、共働き世帯数は男性片働き世帯の1・5倍に増えた。ところが「常勤で働く妻の3分の2が家事の8割以上を担い、全く家事をしない夫もいる。先進国で最も『働きバチ』なのは日本のワーキングマザーだ」という。共働き世帯の仕事と家事を合わせた労働時間は、男性が1日平均9時間42分、女性が同9時間56分。長時間労働は男性に限った話ではない。

 仕事と家事・育児の両立が大変なことから、女性は第1子の出産を機に6割が仕事を辞め、再就職しても低賃金の職に追いやられる傾向がある。国税庁の調査では働く女性の65%が年収300万円以下。女性管理職の割合は先進国でも最低水準だ。

 女性は既に活躍している。「問題はさまざまな意思決定の場に女性がいないこと。女性の声を反映させる必要がある」と水無田さんは強調する。

 女性が家事・育児を担う一方で、男性には家計責任がのしかかる。内閣府の調査では、結婚相手の条件に「経済力」を挙げた女性は52・5%で、男性の7・5%と圧倒的な差があった。

 仕事にまい進する結果、男性は地域や家庭に「居場所」がなく、社会的孤立に陥りやすい。水無田さんは「男性の皆さん、退職後も付き合う相手はいますか」と笑いを誘いつつ、「自殺の7割、孤独死の7割、引きこもりの7割は男性とのデータがある」と深刻な状況を紹介した。

 では、女性も男性も共に幸せになるには、どうすればよいのか。水無田さんは「女性を企業のメンバーに、男性を家庭や地域社会のメンバーにすること」を挙げ、男性片働き世帯を標準とした社会制度の見直しを提言する。

 近年、仕事と育児の両立は進められているが「独身男性の介護離職などには目が向いていない」として、「ケアワークをする人が柔軟な働き方をできるよう、男女問わず雇用環境を総合的に改善する必要がある」と呼びかけた。

 ●「政府目標は女性超人化」

 女性活躍推進法は「日本女性超人化計画」-。4月に施行された同法を、水無田さんはこう表現した。政府が描く女性像があまりに非現実的だからだ。

 政府は「出生率1・8」を目標としている。医学的に、30歳を超えると女性が自然に妊娠する可能性は少しずつ低下し、35歳くらいから急激に低下する。水無田さんは、34歳までに子ども2人以上を産み、働き続けるには数々のハードルがあると指摘する。

 22歳の大学卒業までに、子育てに配慮のある会社の内定を獲得。交際から婚約まで平均4年かかるため、血眼で婚活し29歳で結婚。それまでに産休・育休を堂々と取得できるだけのキャリアを確立。30歳で妊娠、31歳で第1子を産み、保育所を確保、32歳で職場復帰。授乳を終わらせて妊娠しやすい体に戻し、33歳で妊娠すると、34歳で第2子出産ができる-。水無田さんの説明に会場から力のない笑いがこぼれた。


=2016/07/05付 西日本新聞朝刊=

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