託す~被災地から 野党共闘思い複雑 「政権の暴走止める手段なら」

西日本新聞

 グレーのスーツに身を固めた60代の男性は、熊本市内で会社を経営している。「自民1強の政治状況は危うい。健全な対抗勢力がいる。ただ、野党共闘というのはどうかね…」。応接室のソファに腰を沈め、首をひねりつつ話を始めた。

 民進党衆院議員、松野頼久元官房副長官の古参支持者。参院選で熊本選挙区を含む全ての「1人区」に共産、社民両党などと統一候補を擁立した民進に、複雑な思いを抱く。

 熊本では頼久氏の祖父鶴平氏、父頼三氏の代からの支持者を「松野党」と呼ぶ。「小説吉田学校」第1部で、鶴平氏は吉田茂元首相の政治指南役として登場する。政治的な術策と選挙の票読みに優れ、異名は「ずる平」。頼三氏も小泉純一郎元首相の後見役として知られた。男性には親子2代の「保守政治家を支えてきた」との自負がある。

 男性は頼三氏の言葉を引いた。「政局とは、政策を実現するための土俵」。政界の権力闘争や駆け引きは、国民生活向上の手段であるべきだという信条だ。民主党、維新の党を経て民進党結党に参加した頼久氏の行動も、その教えを胸に刻んでいたのなら「納得するしかない」。

 熊本選挙区は、震災復興が大きなテーマ。予算を握る与党は手厚い被災地支援をアピールする。野党の戦略は難しい。世論調査によれば、野党統一候補の無所属新人は自民現職に苦戦を強いられている。

 安倍晋三首相は街頭で、野党共闘に「野合」批判を繰り返す。ならば自公政権はどうか。憲法観、安全保障政策の立ち位置が異なる矛盾を抱えているのではないか-。

 「必要悪…なのかな」。男性は消極的ながら、政権の暴走を食い止める手段としての野党共闘を受け入れる。「圧倒的な数の力を得ると、何でもできる、許されるという思考に陥ってしまう」。政治権力とはそういうものだと思うからだ。

=2016/07/06付 西日本新聞朝刊=

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