託す~被災地から 「成長する村」未来図一変

西日本新聞

 熊本県西原村の日置和彦村長(68)は、しばしば村を一つの家族に例えて話をする。熊本地震発生後の状況を尋ねると「子どもたちにアメいっちょ買うてあげられんとですよ」と嘆く。

 地方都市の人口減少が加速する中、震災前まで全国でも珍しい「成長する村」だった。恵まれた自然、熊本市まで車で30分余りの利便性。子ども医療費は中学3年まで無料、企業誘致も積極的に進めてきた。20年前に5千人台だった人口は増え続け、2013年に7千人を突破した。

 地震後、村を去る住民が相次ぎ、5月末に人口7千人を割り込んだ。攻めの村政から一転、避難住民の支援やインフラ復旧、生活再建など困難な課題に追われている。1281棟の住宅が全半壊。主要産業の農工業の被害も甚大だ。復旧費は400億~500億円に上る見込みで、年間財政規模約40億円(16年度)を大きく上回る。

 震災後、公務に追われ休日は2日だけ。村長の頭を離れないのは、村財政の行方だ。政府は熊本地震を激甚災害に指定。復旧費の8~9割台を国が負担するが、残りの自治体負担を賄っていけるのか。不安は尽きない。

 地方活性化策として政府が掲げる地方創生-。「ひとつ上を行く上質な生活環境、生活空間を提供する」。村は昨秋、地方創生総合戦略を策定し、こんなキャッチフレーズを掲げた。避難所に身を寄せる住民たちと接する今となっては「生活再建あっての地域創生ですたい」と言う。

 村に生まれ、村で建設会社を切り盛りし、村議もした。「今は一番悪いとき。10年後、あんとき頑張ったけん、今はこんな良くなったと振り返るときが来ますけん」。自らに言い聞かせるように、被災者たちを励ます。

=2016/07/07付 西日本新聞朝刊=

PR

政治 アクセスランキング

PR

注目のテーマ