託す~被災地から 医療の進歩が救う命 介護する家族支援に遅れ

西日本新聞

 熊本市北区の一戸建て住宅。西留まなみさん(50)は、たんを吸引する管を長女光波(みなみ)さん(17)の口に差し入れた。すっかり慣れた手つきだ。「体にむち打って介護してます」と、記者を笑わせた。光波さんは、全身の運動機能が失われる脊髄性筋萎縮症の最重度1型(ウェルドニッヒ・ホフマン病)。在宅で、寝たきりの生活を送る。

 何とか乗り越えられたと思う。4月の熊本地震。家に大きな被害はなく、かかりつけの小児科が市内の病院に避難場所を確保してくれた。もし自宅が倒壊したり、病院までの道路が寸断したりしていたら。長女の命をつなぐ医療機器は電源を失えば使えなくなる。電気、ガス、水道などライフラインが途絶えた、とのニュースを見てぞっとした。

 光波さんのように、医療的なケアを必要とする難病や重い障害がある人は増えている。文部科学省によると全国の特別支援学校でこうしたケアが必要な児童生徒は昨年度、8143人。5年間で837人増えた。医療が進歩し、命を救われる患者が増える一方、つきっきりで看護と介護に追われる家族への公的サポートは十分とは言い難い。

 西留さんが眠れるのは「せいぜい2、3時間」。月5回利用している日中預かりサービスも、予約がいっぱいで断られる時もある。自身も昨年、関節リウマチを発症。思うように動かせない両手の治療に、1年間で約90万円かかった。

 地震発生から1カ月後の5月、改正障害者総合支援法が成立した。初めて、医療的なケアを必要とする子どもへの支援充実が盛り込まれた。関係者が「ついに山が動いた」「歴史的な一歩」と待ちわびた法制化だけど-。「法律に盛り込んで終わりにしないで。現場が変わることが大事」

=2016/07/08付 西日本新聞朝刊=

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