託す~被災地から 初の1票「難しいけど…」

西日本新聞

 キン、キン-。金属バット特有の打球音がこだまする。熊本県高森町。阿蘇五岳を背後に望む県立高森高野球部の練習球場は、手入れの行き届いた天然芝が自慢だ。

 全校生徒78人。野球部員も6人しかいない。外野の芝が傷まないのは、投手、捕手、内野の守備位置を固めると、外野を守る選手がいないからだ。10日開幕する全国高校野球選手権熊本大会。陸上部員4人に助っ人を頼み、どうにか出場にこぎつけた。17年ぶりの初戦突破を目指す。

 熊本地震の発生当初は、野球どころではなかった。藤本隼太主将(3年)は、南阿蘇村の自宅近くの避難所でボランティアを買って出た。今春、廃校になった村立白水中の同級生や先輩、後輩が顔を合わせ、自然と体が動いた。避難所に届く物資を運んだり、避難者の名簿を作ったり。人口減少が進む地域では、若い世代は貴重な戦力となった。「頼りになるばい」と大人たちは目を細めた。

 8日、藤本さんは誕生日を迎え、18歳になった。10日投開票の参院選で初めて手にする選挙権。「政治ですか…。正直、難しくてよく分からないっす」。震災までは、政治関係のニュースは聞き流す程度だった。

 地震は中山間地の球児の日常にも影を落としている。阿蘇大橋が崩落して道路が寸断。大津高(大津町)や小国高(小国町)の野球部との合同練習もままならなくなった。復旧と復興には政治の力が必要で、政治が暮らしと結びついていると感じるようになった。

 とはいえ、政党のこと、候補者のこと、知らないことばかり。誰に1票を投じれば、自分や家族、被災した地域、この国のためになるのだろう。「うーん…。とにかく投票に行きます。最後までよく考えて」

=2016/07/09付 西日本新聞朝刊=

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