託す~被災地から 記者ノート 先送り課題地震で露呈

西日本新聞

 6月22日の参院選公示以降、熊本地震の被災地を歩き、多くの有権者の声に耳を傾けた。交通網が寸断され、集落離散の現実味が増す地域があった。激しい揺れの中、命の危機にさらされた災害弱者がいた。国や県が押し付ける上から目線の復興事業に憤る市町村職員がいた。

 熊本市で第一声を上げた安倍晋三首相は「政府が復興をしっかり支えていく」と誓った。寝たきりの長女(17)を介護している熊本市の女性(50)は「復旧、復興にお金が回り福祉の財源が後回しにされないか」と話した。選挙戦は「復興」が訴えの中心。多くの被災者の願いだが、救いの手を求める小さな声に耳を澄ますことも、政治の原点だろう。

 2度の震度7を観測した地震は、命や住まいを奪っただけではない。子育て環境の不備、介護のたらい回し、教育現場の疲弊…。被災地の過酷な状況は、政治が先送りしてきた政策課題をあぶり出した。その多くは被災地特有の問題にとどまらない。国全体、各地の自治体の共通課題だ。

 阿蘇大橋が崩落し一部集落が孤立状態に陥った南阿蘇村。自営業の男性(73)は「個人の力では復旧、復興はできない」と語った。政治の役割がいかに大きいか、今までになく1票の重みを感じるという。

 一方で、被災自治体の職員たちからは投票率低迷を懸念する声を聞いた。「政治に関心もないし期待もしない。政治家は何をしているか分からない」。期日前投票を終えたある男子高校生(18)から、こんな言葉も漏れた。政治と有権者の間に横たわる断層をどう埋めるのか-。与野党を問わず、政治が突き付けられている最大の課題だろう。

 公示直後、阿蘇大橋の迂回(うかい)路を走ると、車線中央の大きなひび割れにハンドルを取られそうになった。選挙戦後半、同じ道を通った。補修は手付かずで、ひび割れはさらに広がって見えた。

=2016/07/10付 西日本新聞朝刊=

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