親の病気 子への伝え方 見通し示し不安減らす 疑問話せる環境づくり

西日本新聞

 子育て世代が病気になったら、子どものことはどうしたらよいのか。歌舞伎俳優の市川海老蔵さん(38)の妻、小林麻央さん(33)が乳がんを患っていることが明らかになり、闘病中の子育てや子どもの心のケアに関心が寄せられている。福岡市南区の九州がんセンターにあるサイコオンコロジー科を訪ね、患者や家族の精神面のサポートに取り組む臨床心理士の白石恵子さん(39)に話を聞いた。

 サイコオンコロジーは「精神腫瘍学」と訳される。がん患者や家族の精神的なストレスを和らげ、生活の質の向上を目指すための学問だ。同センターには2003年に科として設置され、患者本人やその家族、子どもの不安や悩みについて相談を受ける。こうした、患者とその家族への心のケアの体制は、医療現場で広がってきている。

 告知を受けた親がまず直面するのは、子どもに病気を伝えるのか、伝えるならどう伝えるのか、ということだ。

 白石さんは「人によってさまざま。正解はないです」と語る。病状を詳しく説明する、出張と言って入院する、病名は言わず病気とだけ伝える…。子どもの年齢や性格を考え、いろいろな決断があるという。

 病名を伝えても、伝えなくても、入院など親の不在は、子どもに不安を与える。白石さんは「少し先の見通しを示してあげられたら、気持ちが落ち着く」とみる。特に幼い子は、過去、現在、未来と区切って話すと理解しやすいという。

 例えば、「過去」は痛かったので検査し、病気が分かった。「現在」は手術や治療を受ける。「未来」は夏休みの頃には治療が一段落して退院する-。何カ月先という概念は難しいので、誕生日や季節の行事などイベントに絡めて伝えるのがよい。

 子どもは治療のさまざまな場面で疑問を持つ。「死んじゃうのかな」「うつるの?」など病気に関することから、「入院中、誰がお弁当を作るんだろう」「塾の送迎は?」といった生活に密着したものまで。「私が悪い子だったから病気になったのかな」と大人が思いも寄らないことで悩むこともあるそうだ。

 「疑問をため込まず、口にしやすい環境が子どもにとって大切」と白石さん。問いに対して「何でそう思ったのか」を聞いていくと、不安に寄り添い、和らげるきっかけになるという。

 親がつらいという現状を子どもなりに理解すると、何か役に立ちたいとお手伝いなどを頑張る子もいる。数々の親子を見てきた白石さんは「子どもに話したら、落ち込むのではないかと心配かもしれませんが、子どもは大人が思っている以上に、理解力も置かれている状況への柔軟性もある。子どもの力を信じてほしい」と話す。

 闘病中は親自身も自分を責めることがある。白石さんも「子どもに何もしてあげられない。仕事も行けないし、学校の役員もできない」と落ち込む患者を目の当たりにしてきた。「前向きな時もあれば、不安な時もあって当然。抱え込まず相談して」。病院の相談支援窓口や緩和ケアチーム、主治医や看護師に話すのがよいという。

 闘病中に親代わりを務めることになった祖父母や親戚は、肉体的にも精神的にも大変だ。つい「言うことを聞かないとお母さん(お父さん)は元気にならないよ」と言いたくなっても、この言葉は使わない方がよいそうだ。親が病気になったのは自分のせいだと思い、長年にわたって子どもの心の傷になることもあるからだ。

 子どもの送迎を手伝ったり、食事を届けたり、友人や知人のちょっとした心遣いが「うれしくて助けられた」という声を多く聞くという。腫れ物に触るようにではなく、普段通り接してもらえるのも闘病の支えになる。


=2016/07/12付 西日本新聞朝刊=

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