世界女性サミット報告<上>「ガラスの天井」なお 74カ国1000人参加 役員比率など議論

西日本新聞

 女性の経済活動への参加をテーマにする「世界女性サミット」が6月、ポーランド・ワルシャワで開かれた。初開催から27年目となる今年、74カ国から約千人が参加。日本からは過去最多の61人、うち福岡県内の企業や自治体からは管理職ら13人が参加し、昇進の壁や後進育成など共通の課題を話し合った。熱い議論を2回にわたって報告する。

 サミットは同9日から3日間の日程で開かれ、全体会合と、「リーダーシップ」「起業」などの分科会で構成された。

 3日間を通じてよく耳にした言葉は二つある。「ガラスの天井」(女性の昇進を阻む見えない壁)と「クオータ制」(女性役員の登用を一定割合義務付ける制度)だ。

 1980年代に米国で使われ始めた「ガラスの天井」という言葉は30年を経た今も、女性会議の主要議題だった。例えば分科会の一つ、「男性CEO(最高経営責任者)フォーラム」で、ポーランド人女性が壇上の男性経営者に問いただした。「いつまで女性は(昇進機会の平等を)待たなければならないのか」

 独自動車大手ダイムラーのマンフレッド・ビショフ監査役会会長は「一足飛びにはいかない。一歩一歩積み上げるしかない」と述べた。同社は2020年までに上級管理職の女性比率を20%に引き上げる数値目標を定め、実行中という。「男性差別という指摘もあるが、ある意味当たっている。昇進を躊躇(ちゅうちょ)する女性にも『勇気を持って! あなたはできる』と言いたい」

 役員の7分の3が女性というメットライフ生命保険・欧州中東アフリカのマイケル・カラフ社長は、「女性や若い世代が持っている感性は、ビジネスにも政治にも必要」と経営に多様性が重要だと指摘した。

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 別の分科会、女性役員会合では、米調査機関・CWDIがまとめた地域別の女性役員比率=図=をもとに、クオータ制が議論された。

 域内の各国でクオータ制が導入されている北欧が34・4%と最も高く、欧州では高い傾向がある。化粧品会社ロレアル・ポーランドのビオレッタ・ロゾロフスカCEOは「長年取り組んでいるが女性役員の数は不十分。50%など思い切った数値目標を定め増やさなければ」と話した。

 一方、女性役員の数だけを増やすことに疑問の声も上がった。監査コンサルタント、デロイト中東のラナ・サルハブ取締役は「役員会に男女平等は無く、女性役員イコール女性の代表扱いをされる。役員は本来ステークホルダー(消費者や株主、従業員や取引先など利害関係者全体)のために働くものなのに」と不満を漏らした。ブリヂストンや味の素の社外取締役を務める橘・フクシマ・咲江さんも「女性だからではなく、人格と能力で女性役員を選ぶべきだ」と述べた。

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 世界女性サミットは1990年、世界の女性経営者の連携を目指し、米非営利組織「グローバル・サミット・オブ・ウィメン」(アイリーン・ナティビダッド代表)が始めた。女性版ダボス会議(世界経済フォーラムの年次総会)と呼ばれることもある。

 ダボス会議との最大の違いは毎年開催国を変え、世界中から平等に参加できるようにしていることだ。また、ダイムラーやシーメンスなど世界的大企業の役員クラスから地方の中小企業の中間管理職までが朝食や昼食を共にし、平等に議論できるのも特徴だ。

 来年は5月の東京開催が決まっている。明日掲載予定の(下)では、福岡県からの参加者の声を中心に、本サミットの収穫などを伝える。


=2016/07/15付 西日本新聞朝刊=

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