<42>看板不要、煮干しの神スープ JON PAN(ジョン パン)(福岡市中央区)

西日本新聞

藤井元さんは「より良くするため変えることは必要。たまにいじりすぎて失敗しますけど」と言う 拡大

藤井元さんは「より良くするため変えることは必要。たまにいじりすぎて失敗しますけど」と言う

福岡市中央区薬院4の2の12。ニボ神980円。ボニートヌードル850円。醤油そば750円。午後8時~翌午前4時。不定休。092(521)7771。

 福岡市中央区薬院の高宮通り沿いは個性的な飲食店が並ぶエリア。その一角に、夜だけ開く隠れ家のような店がある。ラーメン店らしくないモダンな外観で、店名や看板などは一切掲げられていない。

 店構えと同様に店主の藤井元さん(40)は普通を好まないようだ。昨年9月の開店当初は屋号すらなかった。しばらくして「JON PAN(ジョンパン)」と一応名付けた。「ラーメン店らしくなく」とこだわった店内はレストランバーのような雰囲気が漂う。

 メニューも一風変わっている。魚介、鶏ベースの「醤油(しょうゆ)そば」は分かるが、ほかの二つは、カツオなど和風だしにこだわる「ボニートヌードル」と、煮干しを前面に出した「ニボ神(ゴッド)」と個性あふれる。3種類が共通して非豚骨系なのは「豚骨が主流の博多のラーメン界に一石を投じたかったから」と言う。そして驚くことに、藤井さんはその一石のために、メニューだけでなく店ごと造り直してしまった。

 前身は、昨夏まで同じ場所で営んでいた豚骨ラーメン店「元次」。行列ができ、売り上げも上々。にもかかわらず再出発したのは「変わり続ける」という信念から。振り返ってもらうと、確かに藤井さんの人生は変化の連続だった。

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 「ものづくりに対する憧れが膨らんだ」。32歳のころ、約10年勤めた会社を辞め、さまざまな飲食店を展開する企業に転職した。前の職場では指示を出す立場だったが、新天地の上司は10歳下。それでもがむしゃらに学び、鉄板焼き、中華などを経験する中、ラーメンの「一杯の中で表現する潔さ」に引かれた。

 35歳で「元次」を立ち上げた後も変わり続けた。最初は豚骨と鶏がらを混ぜたラーメンで勝負。軌道に乗りだすと豚骨のみのこってりスープに移行した。その後、他店を食べ歩く中で創作ラーメンに心を動かされる。試作を重ねて3種類のラーメンにたどりつき、ジョンパンを開店した。

 「時間をかけて味わってほしい」と昼の営業はやめた。作り手としても手を抜かない。注文を受けてからチャーシューを切り、一杯ずつ小鍋でスープを完成させる。

 東京で食べた煮干しラーメンに衝撃を受けて創作したという「ニボ神」をいただく。鶏白湯(パイタン)に大量の煮干しを混ぜ込んだスープは、粒子を感じさせるほどのとろとろした舌触り。煮干しのうま味がぐいぐいと主張するストロングタイプだが、えぐみは少なく、麺とよく絡む。なかなか味わえない一杯である。

 再出発から10カ月。口コミで評判が広がり、ほかでは食べられない一杯を求めて多くの麺好きが訪れている。 (小川祥平)


=2016/07/21付 西日本新聞朝刊=

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