【聴診記】高齢者の医療費を考える

西日本新聞

 公的医療保険制度で全国の医療機関に支払われる医療費の総額は年々増加、2013年度は40兆610億円になったことを前回紹介した。これを人口1人当たりに換算すると年間で31万4700円使っていることになる。

 さらに65歳で区切ると、65歳未満は1人当たり年間17万7700円、65歳以上は1人当たり同72万4500円。高齢者は、若い人の4倍以上を使っている。

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 同制度の保険者(運営主体)の一つで、75歳以上が加入する福岡県後期高齢者医療広域連合は昨年9月、福岡市内で健康長寿福岡大会を開き、講演「『最後まで 人生の主人公たるために』‐老いと死から逃げずに生きる」を催した。講師は著書「大往生したけりゃ医療とかかわるな」(幻冬舎新書)などで知られる中村仁一氏(76)。医師で老人ホーム「同和園」(京都市)付属診療所所長を務めている。

 その講演録をめくると、中村氏はこんなことを語っている。

 「死に時が来たら、延命なんぞされて、ぶざまな姿をさらさないで、潔く死ぬというこれに尽きると思います。では、死に時っていつか? 自分で飲み食いできなくなった時です」

 「死ぬというのは、枯れること。枯れて死ぬんです。これは、一番楽で、自然で、穏やかなんです。ところが、点滴されたり、ここ(腹)から、流動物を入れられたりするのは、枯れるのを邪魔するんです。本人を苦しめる。家族は満足かもわからない」

 「あれ、枯れ木に肥料ですよ。しかも、医療費もかかる。介護の費用もかかる。こんな事をしていたらですね、今の日本の良い制度は続きません」

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 中村氏は高齢者の健診については、次のような見解を述べている。

 「私も75歳だから長寿健診の通知がきました。行ってませんけどね。いまさら、年寄りの“徴兵検査”やってどうするの?」

 「われわれ医者にとっては、あんなおいしい仕組みはないんです。自覚症状のない元気な人間が、健診受けてひっかかった。医者のところに来てくれるんです」

 「何の症状も無かったなら行くなっていうの、健診なんかにね。政府も悪いんですよ、受診率が何パーセントだとか、上から指令が来てね。それでいて、かたっぽじゃ医療費が高いなんていってね。矛盾してますよ」

 さらに、こんな発言もあった。

 「今、ボケた年寄りが、人工透析、血を洗っていますよね。週3回ぐらい。そう、ボケていますからね。何されているか理解できない。大声だして暴れまくりますから透析なんてできませんものね。皆、縛り上げて一服盛っていますよ。そうでもしないとおとなしくしていませんから。もう、完全に枯れ木に“肥料”といっていいですよ。あれ、年間400万円、500万円(医療費が)かかっている訳ですから、1人につき。枯れ木に“肥料”っていうのは、考えないといかんですね」

 「自分で食えなくなったボケた年寄りに、総入れ歯。これもどうかと思いますけれど。まぁ、今、歯医者も食えなくなっていますからね」

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 同広域連合は今年も9月18日に福岡市・天神のアクロス福岡で健康長寿福岡大会を開き、講演を催す。

 演題は「薬は5種類まで!~年々、飲む薬が多くなっていませんか?」。講師は東京大学大学院教授(東京大学医学部付属病院老年病科長)の秋下雅弘氏だ。

 秋下氏は当日の講演で、加齢に伴い生活習慣病などの慢性疾患が積み重なり、70歳以上では平均6~7種類服用しているとされることを説明。多剤服用の問題点として副作用の増加や飲み忘れを挙げ、「飲み忘れは薬剤費の無駄になるし、多剤服用自体が薬剤費を押し上げている」などと指摘する見通しだ。

 福岡大会は今回も「高齢者と医療費のこと」を考えさせられる内容になりそうだ。

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 福岡大会は当日午後1時から。ロコモ予防講習などもある。だれでも参加でき無料。中村氏の講演録も希望者に無料で提供・送付する。いずれも問い合わせ、申し込みは同広域連合=092(651)3111。


=2016/07/30付 西日本新聞朝刊=

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