相模原殺傷事件を考える<上>九州の障害者らに聞く 「社会との隔絶が偏見生む」 「生まれた子には役割ある」

 相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害された事件から1週間。「重複障害者が生きていくのは不幸だ。不幸を減らすためにやった」という容疑者の身勝手な暴論は、障害者やその家族たちを深く傷つけた。障害者への偏見や差別の根を絶ち、二度と同様の犠牲を出さないため、何をすべきなのか。九州の障害者、家族、支援者と一緒に考えた。

 「寝たきり芸人」を名乗るお笑いタレントのあそどっぐさん(37)=熊本県合志市=は事件の一報を聞いてずっとふさぎ込んでいる。脊髄性筋萎縮症のため寝たきりで、ヘルパーの24時間介助を受けて1人暮らし。「長く施設で暮らしていた被害者たちと、自分との環境の違いは何だろう」

 厚生労働省の2016年版障害者白書によると、知的、身体、精神障害者は全国で約860万人。うち、施設入所者などは約51万人と推計される。知的障害者の入所割合は16・1%と、身体障害者の約8倍に上る。

 自らの「障害」などをネタに笑いを発信し続けるあそどっぐさんは、障害者と社会との隔絶が偏見を生んでいる気がしてならない。「いろんな人がいて、いろんな生き方があると分かる社会なら、偏見も人生の息苦しさも和らぐのではないか」と考える。

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 福岡県筑紫野市の女性(46)は「障害者は不幸」という偏見に怒りと悲しみが収まらない。小学4年の長女(9)は超低出生体重児で生まれ、体のまひ、知的・視覚障害がある。言葉でのコミュニケーションはあまりできないが、お笑い番組を見て笑うし、歌に合わせて声を出す。宿題は面倒くさそう、リハビリが進まない日は悔しそう。長女の日々の喜怒哀楽や成長に触れ、幸せをかみしめている。

 長女が地元の小学校の特別支援学級に入学して間もなく、障害のない同級生が長女に「車いすに座って楽できてずるい」と言った。「障害のある特別な子」と決めつけず、バリアーがないのだと感じた。今、同級生たちは自然に車いすを押し、長女と一緒に大声で笑う。そこに不幸はない。

 筑紫野市の女性は「幼い頃から障害者と過ごす環境があれば、差別や偏見はそもそも生まれないのかもしれない」と実感している。

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 4月の障害者差別解消法施行後に起こった事件。福岡市身体障害者福祉協会会長で肢体不自由がある男性(75)は「ようやく障害者の人権が守られる時代が来たと思っていたのに。法整備が進んでも、一人一人の心が変わらなければ…」と話す。「背景には無理解による差別意識がある」と、障害者自身が企業や学校に出向く活動を地道に続けていくという。

 知的障害者の家族でつくる同市手をつなぐ育成会の理事長の男性(68)も「普段見聞きする障害者への偏見や差別とは、異次元の事件で言葉にならない」と衝撃を隠さない。同会が運営する施設の利用者にも動揺が見られるため、全国手をつなぐ育成会連合会が発信したメッセージ=図=を張り出したり、読み上げたりしている。「今できるのは、冷静に普段通りの生活を続け、諦めないこと」と強調した。

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 重度障害児の在宅生活を支える熊本小児在宅ケア・人工呼吸療法研究会は18年前、意思疎通ができない最重度障害の男児の在宅医療を充実させる目的で医師たちが発足させた。人工呼吸器などが必要な在宅医療児は電源が命綱。大規模停電が発生した熊本地震では、同研究会作成の避難計画が生き、在宅医療を受ける障害児に犠牲は出なかった。

 障害の重い重複障害児の存在が医療体制を変え、多くの命を救ったことになる。代表の緒方健一医師(60)は「生まれてきた子どもには必ず役割がある。障害のある子がいるから社会がやさしくなるのだと知ってほしい」と訴える。


=2016/08/02付 西日本新聞朝刊=

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