参院選を終えて 「憲法って何?」拡大版 地元アイドル「初めての1票」

西日本新聞

 7月10日投開票の参院選が終わった。選挙権年齢が20歳から18歳以上に引き下げられて初めての国政選挙。憲法改正に前向きな「改憲勢力」が参院議員の3分の2以上を確保した。10代の若者たちはどんなことを考え、一票を投じたのだろう。そして、選挙結果を考えると、若者たちの意識や行動が問われるのは、むしろこれからかもしれない。連載「18歳と考える 憲法って何?」の第2回拡大版として、福岡県弁護士会の春田久美子弁護士(49)と、地元アイドル「HR(エイチアール)」の篠山せらさん(19)、渡辺心さん(18)が語り合いました。

 春田 初投票の感想は?

 篠山 意外とみんなスムーズに投票していた。単に入れに来ているのか、あらかじめ意思を固めているのか…。

 渡辺 鉛筆で書いた結果で決まってしまうと考えると、怖いとも、あっけないとも思いました。

 春田 どう選んだ?

 篠山 マニフェスト(政権公約集)の気になるところを読んで、お母さんと話して。憲法改正について、すごく考えている人がいてその人にしました。

 渡辺 ネットで情報収集し、家族や自分に関係する問題を改善しようとしている人にしました。子育て、老後、女性の社会進出とか。

 春田 私は、大きな視点では世の中が変わってほしいと思ったので、そんな勢いがあるような人に託した。どういう改善点を感じたかな。

 渡辺 政党や候補者が言っていることが難しすぎて、理解できない。流す情報が分かりにくすぎる。

 春田 若い人向けに多少意識はし始めたんだろうけど…。例えば、あるコンビニは新商品のデザートを開発するとき、内容や価格について、女子高校生からも意見を聞く。どう工夫したらいいかな?

 篠山 若者に人気のある人が政治のPRをやったら見ることもあるんじゃないかな。選挙カーを見たことはあるけど、何のためか分からない。

 春田 アイドルでもコンサートと日ごろの地道な握手会があるけど、政治家もミニ集会をやっている。会いに行けたり、国会議事堂を見学したりするツアーがあれば行くかな?

 2人 行かない(苦笑)

 春田 ブログなんかで発信するのは?

 渡辺 内容が面白ければ見るかも。

 春田 若者に発信力がある人が、若者言葉で説明してくれたら見たり聞いたりする?

 渡辺 この憲法対話企画みたいに、政治家と有名人が話して、みんなに教えてあげると若者は見ると思う。

 春田 なるほどね。博物館で有名な俳優が解説してくれるというのがあるけど、そんなイメージかな。

 〈参院選福岡選挙区の投票率は52・85%。抽出調査では18歳=55・90%、19歳=45・37%だった〉

 渡辺 想像より高かった。30%くらいかと。

 春田 思っていたより高かったのはどうしてかな?

 渡辺 「18歳から投票できます」というマスコミの宣伝効果じゃないかな。興味本位もあったと思う。18歳までは高校生が多いので教育の機会があるし、先生が呼び掛けたとも思うし。19歳は周囲に教えてくれる大人が減るから、投票率も低かったんじゃないかな。

 篠山 私は思ったよりも低くて驚いた。19歳は働きに出る人もいて、行く暇がないということもあるんじゃないかな。

 春田 なるほどね。学校の授業の改善点はあるかな。

 渡辺 私は高校で政治の授業をとっていない…。

 春田 2020年度にも「公共」という高校必修科目が始まる。憲法や政治もその中で教えて、受験科目にもなる。

 渡辺 絶対勉強する!

 春田 でも、受験科目じゃなくても、クレジットカードの使い方、保険、税金とか、私自身は教えてもらってなくて世の中に出てから苦労した。

 篠山 学校で知っておくべきだと思います。

 春田 ネットゲームもそうね。アイテムを購入するときに「お父さん、お母さんのお許しをもらっていますか」と表示される。うそをついて購入するとどうなるか。法律は、子どもが結んだ契約は取り消せるけど、例外でうそをついていたら取り消せない。知らないと困るよね。

 〈参院選の結果、衆参両院で改憲勢力が3分の2を占め、憲法改正への政治的基盤が戦後初めて整った〉

 春田 これから憲法改正の問題が出てくるかもしれないけど、条文で残したいところ、変えたいところはある?

 渡辺 本当に改正するとなったら、内容によりけりなので何とも言えない。参院選は憲法を変えるという公約を立てて3分の2の議席をとった訳じゃなくて、もっと別の側面だったと思う。アベノミクスで給料が上がった人もいるし、景気がよくなってうれしいから、自民党を選ぼうとか。有権者は憲法改正は二の次と考えてたと思う。

 篠山 今の日本はイメージがあまりよくない。非正規雇用、子どもの貧困とか。憲法を変えてよくなると思っている政治家もいると思うけれど、それで日本がよくなるのかな。もっと違う視点からできることを考えた方がいいんじゃないかな。

 春田 70年前、女性が選挙権を得たときは喜んだ。でも、それが薄れている。政治や選挙が「関係ない」という人に、どう考えてもらうのか。若い人に教えてほしい。今までの大人はできなかったことだから。

 篠山 今までの対話の積み重ねで、知っておくべき事もたくさん増えた。ちょっとの知識でも持って、誰か1人にでも伝えることが大事なんじゃないかなと思う。

 渡辺 中学、高校でやることには限度があるけど、大学法学部に入ってやっと分かったことがある。憲法や法律はいつも私たちを守ってくれている。実は身近なもの。それをいろんな人に知ってほしい。


 ▼憲法改正の手続き 憲法改正にはまず、衆院で100人以上、参院で50人以上の議員の賛成による改憲原案の提出が必要。改憲原案は、衆参両院の憲法審査会でそれぞれ審議され、共に出席議員の過半数の賛成で可決される。可決した場合は本会議に上程され、憲法96条に基づき、衆参両院で総議員の3分の2以上が賛成すれば、国会が改憲を発議する。今回の参院選で、この条件が整った。発議した日から60~180日の間に国民投票が実施され、有効投票総数の過半数の賛成で承認される。国民投票の投票年齢は現在は「20歳以上」だが、2018年6月に「18歳以上」に引き下げられる。

=2016/07/31付 西日本新聞朝刊教育面=

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