部活動(1)ジレンマ 中堅教師の悩みは深く

西日本新聞

 炎天下のテニスコートに、絞り出すような「ファイトー」の声援が響く。中体連(日本中学校体育連盟)の地区予選が3日後に迫った7月6日。福岡市立吉塚中学校(博多区)では、軟式テニス部の女子生徒約30人が練習に励んでいた。

 顧問を務めるのは手嶋将人教諭(31)。顔は真っ黒に日焼けし、短パン姿で生徒にボールを全力で打ち込む。3年生の担任で、担当は英語。着任した2013年から顧問を務める。

 チームの課題は、ダブルス戦での前衛と後衛の連係。「自分の背中を押してくれるのは、自分の声しかない」「ミスを恐れず、自分で決めにゆく勇気を」。指導の声も熱を帯びた。

 「生徒たちが、こんなに部活に打ち込めるって、この時期しかない。チームプレーの中には、いろんな学びがあるし、悔いのない結果を残してあげたい。だから私たちも熱くなる。でも、教師の本分はやはり授業。ジレンマがありますよ」

   ◇   ◇

 手嶋教諭は、授業改善に取り組む研究主任も務める。研究指定校になった14年度から2年間は、その業務にも追われた。

 テーマに決めたのは「アクティブ・ラーニング」。教員が一方的に教え授ける授業を改め、生徒同士の教え合い、学び合いの場面を増やし、学力向上につなげる狙いがある。

 同僚教員と話し合い、計画を考え、市教委への報告文書を作成するのは、部活動が終わってから。職員室での作業は午前零時ごろまで及ぶことも少なくなかったという。

 11月中旬にある研究発表会の前は大変だった。2学期のこの時期、学校は忙しい。部活動では10月に新人戦があり、11月初めにはクラス対抗の合唱コンクール。その指導に加え、期末テスト作成の準備も。「あのころは、学校や車で泊まり込む日もありましたね」

 団塊世代の大量定年、新卒教員の大量採用に伴い、各学校とも50代、20代が厚く、中堅の30、40代が薄い傾向にある。その薄い中堅層に、部活動を含めた業務分担が重くのしかかる。手嶋教諭もその一人で、「自分の時間が少なすぎますよね」。

   ◇   ◇

 夏休みに入っても、手嶋教諭は学校に通う日々が続いている。生徒たちは午前8時から2時間、教室で宿題を勉強し、午後5時まで練習する。その指導に当たっているのだ。

 生徒と教員の負担が重すぎるとして、文部科学省は部活動のあり方を見直す方針。当の生徒たちはどう思っているのか。宿題を終えた教室で生徒たちに聞いてみた。手嶋教諭は気遣って、席を外した。

 「メッチャきついと思うときもあるけれど、みんなと協力する時間が楽しい」「自分と違う意見や、自分に足りないところを学べる」「自分だけではなく、回りのことも考えられるようになった」

 前向きな発言が相次いだが、練習時間については注文もあるようだった。

 ある生徒は「土日の練習は午前か午後の半日にして、平日練習はもっと長くていい」。練習にメリハリを求める提案で、一斉に拍手が起こった。みんな、部活動も好きだけれど、もっと遊びたいのだ。

 夏休みの午前8時登校の見直しを求める声もあった。半数が塾に通っており、帰宅時間や宿題対応を考えれば「もっと朝はゆっくりしたい」と話す。

 なるほど。文科省の対応や指示を待たずとも、それぞれの学校で、教員と生徒がざっくばらんに話し合えば、改善策はあるように思えた。

 部活動

 公立中学校の部活動は学習指導要領で学校教育の一環として位置づけられているが、生徒の自主的、自発的な参加で実施されている。かつては異学年交流を目的にした必修授業「クラブ活動」と、教育課程(授業カリキュラム)外の「部活動」があったが、中学校では1998年改定の学習指導要領からクラブ活動が廃止された。

 部活動は教育課程外だが、学習指導要領で「学習意欲の向上や責任感、連帯感の育成につながる」とし、教育課程と関連付けるよう求められている。文部科学省の2006年度「教員勤務実態調査」によると、中学教員の約9割が顧問に就いていた。

=2016/08/07付 西日本新聞朝刊教育面=

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