【脊梁の山里発】ブドウとワインの魅力アピール 五ケ瀬ワイナリー支配人 宮野 恵さん(59)

西日本新聞

 夕日が美しい宮崎県五ケ瀬町。その町内の高台に、町が全額出資する五ケ瀬ワイナリーが誕生してから11年になります。くじゅうや阿蘇の山々を望む施設内レストランで、地元産ブドウが100%原料の「五ケ瀬ワイン」をぜひ味わってほしい。

 【標高600メートルの高地にある五ケ瀬町は、昼夜の寒暖の差が大きく、冬には雪が積もる。冷涼な気候は、農産物の市場価値を下げるマイナス要因になってきた。収穫が平地より1カ月ほど遅く、旬を逃すからだ。そこで町はブドウに目を付けた。ワインの醸造で実績のあった雲海酒造(宮崎市)に1995年、ワイン醸造の「技術支援」を要請したのだ。】

 当時、私は同社の生産部門の担当役員。私の出身地の五ケ瀬は、会社発祥の地でもあります。社長は五ケ瀬への思いが強く「要請を断れない」と支援を決めた。町としては、ワイナリーが生産者からブドウを全量買い取ってワインに加工できれば、生産地としての不利を克服できると考えたようです。

 でも五ケ瀬の気候と土壌でワイン向けのブドウを栽培できるのか。まず、いろいろな品種の試験栽培から始めました。同時に、意欲のあるブドウ農家を増やしていった。醸造したワインを地元公民館で農家の皆と味見した。その場で「これはいける」とムードが高まりました。

 【ワイナリーは2005年春完成。同12月、施設内の売店に初めて商品が並んだ。その後、雲海酒造を退社。12年春からワイナリーの支配人を務める。】

 若者定住には働く場が必要だが、過疎高齢化が進む五ケ瀬は働く場が少ない。その意味で、ワイナリーには二つの役割があります。ブドウ栽培で安定収入を得られる生産者を育てることと、ワイナリー自体が雇用の場になることです。町が100%出資するこの施設は町民の財産そのもの。基幹産業に育て、地域振興に貢献したい。

 【契約農家は今季から7軒加わり35軒に。栽培面積も2ヘクタール増の11ヘクタールになる。宮野さんが支配人になった4年前に9人だった社員は19人に増え、醸造工場や農園、レストランなどで働く。】

 私は五ケ瀬の自然が好き。住民は人情に厚く、辛抱強い。年を重ねるほどに、そう感じる。社員の平均年齢は30代の半ば。この地に腰を据え、ここで生きていく次の世代を育てることが私の役目だと考えています。

 【05年度に約5千本(720ミリリットル換算)からスタートした販売本数は、15年度には約8万5000本まで増えた。】

 でも、まだまだ小規模。静かなワインブームが来ています。九州各地には地元産ブドウにこだわるワイナリーが多い。小さなメーカーばかりですが、一緒になって九州ワインの魅力と味をアピールしていきたいと思います。

=2016/07/15付 西日本新聞朝刊=

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