なぜ、サムライアリは「奴隷狩り」をするのか 巣を乗っ取り、幼虫さらう…

西日本新聞

 ごく近代まで、文明人が未開人を奴隷として働かせていたという忌まわしい記憶が残っていますが、これは人間だけが持つ知性の中の欲望から生まれたといってよいでしょう。ところが、この奴隷という行為が昆虫界にあったとしたら誰でも驚くことでしょう。

 ここに紹介するサムライアリは、別種のクロヤマアリを完全な奴隷として働かせて生活しています。真夏の午後、クロヤマアリが出入りして働いている巣から、突然無数のアリが湧き出るように出てきたかと思うと、一定の方向に一斉に走りだします。数百匹が何メートルも、時には何十メートルもどんな障害物をも乗り越えてまっすぐに進みます。その先にあるクロヤマアリの巣の中になだれ込むように入っていき、しばらくすると、幼虫やサナギを口にくわえて飛び出してきて、元来た道を大急ぎで帰ります。

 サムライアリがクロヤマアリの巣を襲って幼虫やサナギをさらう「奴隷狩り」が行われているのです。サムライアリがなぜこんなことをするのかというと、決して自分で餌を集めることはせず、同じ巣で働かせているクロヤマアリからもらって生活しているのです。

 クロヤマアリなしでは生きていけないサムライアリ。その最初の巣の乗っ取りは次のように行われます。空中で結婚飛行をして交尾が終わったサムライアリの女王アリは、地上に降りるとクロヤマアリの巣の中に入り込みます。そこにいるクロヤマアリの女王を殺して、自分がその巣の女王になりすまして卵を産みます。すると、クロヤマアリたちは、その卵からかえった幼虫を自分たちの仲間と勘違いして育てるのです。

 こうして、その巣はだんだんとサムライアリが増え、一方のクロヤマアリは寿命がつきて死んでいくので、働き手がいなくなります。そのため、時々近くにあるクロヤマアリの巣を襲って幼虫やサナギをさらってくるのです。


=2016/08/16付 西日本新聞朝刊=

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