部活動(2)改革案 先生は忙しすぎる

 中学、高校の部活動について文部科学省は、生徒にとっても、教員にとっても負担が重すぎるとして、休養日を設けることなどを柱に、来年度にもガイドラインを策定するという。文科省は現状をどう捉え、何を見直そうとしているのか。

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 「私は非常に学校が好きだったので、朝6時半から夜10時ぐらいまで、部活もし、その後採点もし、授業の準備もしていた。当たり前と思っていたが、当たり前と思ってはいけない。見直しの必要性はあると思う」

 3月の参院文教科学委員会で、馳浩文科相(当時)は委員から教員の過重労働の改善を求められ、答弁で一歩踏み込んだ。馳氏は元高校の国語科教員でレスリング部の監督も務めた。

 その1週間前には、九州を含む若手の教員有志が、部活動の顧問を事実上強制されている現状の打開を訴え、ネット上で集めた2万人以上の署名を文科省に提出していた。長時間労働の是正は、政府が掲げる重要課題でもあり、「教員だってスーパーマンじゃない」(馳氏)。

 部活動見直しの背景には、深刻化する教員の多忙化があり、文科省は4月、学校現場の「業務の適正化」に向けた省内専門チームを設置し、検討に乗り出した。

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 確かに日本の先生たちは、世界的にも忙しすぎる。

 経済協力開発機構(OECD)の調査によると、日本の中学教員の仕事時間は、1週間で53・9時間。調査対象の34カ国・地域の全体平均(38・3時間)を大きく上回り最長だった。中でも、部活動など課外活動の指導は7・7時間で、平均(2・1時間)の3倍以上。多忙化要因の一つになっている。

 部活動の休養日については旧文部省が1997年、参考例として「中学は週2日以上」「高校は週1日以上」などの目安を示したこともあった。生徒参加の強制や、部活動負担に伴い生徒の心身が疲弊する「燃え尽き症候群」が目立ち始めたころだが、歯止めにはならなかった。

 専門チームの議論では、中学で週6日以上の活動が6割を超え、長時間練習が生徒の負担となって授業にも影響している実態が浮かんだ。スポーツ医科学の視点から「中学生が3日連続して練習した後は、1日休息することが効果的などと指針を示してはどうか」という声も上がったという。業務に手いっぱいとなった教員に代わり、非正規の講師を部活動の顧問に充て、やりくりする「ブラック化」を懸念する声も届いている。

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 教員たちは、学力強化に加え、いじめ、不登校、貧困、発達障害などの課題への対応にも追われている。かつてない教育改革の波も押し寄せ、より研修や教材研究などの時間が求められており、部活動指導の負担軽減が急務になっている。

 部活動の見直しモデルとして、文科省が注目するのが東京都杉並区。部活動の充実と教員の負担軽減を両立するため、区教委は外部の専門コーチに週1、2回、部活動の指導を委託する事業を本年度から本格的に始めた。区内全23校のうち17校の34部活動が活用しているという。

 スポーツ関連企業やNPOと派遣契約を結び、地域や民間のマンパワーを活用する試み。学校現場では、経験がないスポーツ種目の部活動顧問に教員が配置されるケースも目立ち、専門指導力も高まるという。コーチは顧問教員、保護者とも話し合い、指導しているという。

 文科省は来年度、全国の中学、高校の生徒、教員、保護者を対象に、部活動の実態調査を16年ぶりに実施。各地の取り組みも参考に指針や基準を示す方針。ただ、強制力はなく、あくまで生徒の自主性を前提とした学校裁量に委ねる形となりそうで、実効性は不透明だ。

=2016/08/14付 西日本新聞朝刊教育面=

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