<44>澄んだ豚骨スープ 3代守る 来々軒(福岡県宮若市)

西日本新聞

昔ながらの店内に立つ石田たつ子さん(左)、山路重紀さんと一美さん夫婦。地元以外の客も多いという 拡大

昔ながらの店内に立つ石田たつ子さん(左)、山路重紀さんと一美さん夫婦。地元以外の客も多いという

福岡県宮若市福丸270の2。ラーメン530円、チャーシューメン700円。おでん100円。午前11時~午後2時、同4時半~10時。定休日は水曜。0949(52)0168。

 豚骨ラーメンと言えば白濁したスープを思い浮かべる。しかし「来々軒」(福岡県宮若市)のスープは澄んでいる。口に含むと、雑味のない豚骨のうま味がじんわりと舌を包み込む。決して薄いわけではない。この滋味あふれる一杯。聞けば、血縁を超えて受け継がれてきた。

 旧若宮町役場があった場所の向かいにある店舗はかやぶきにトタンをかぶせた屋根。ノスタルジックな外観も胸に染みる。「スープの色がきれいだなって思ったのが最初の印象ですよ」。店に入ると、2代目の石田たつ子さん(68)がそう話してくれた。約35年前、石田さんは旧宮田町から引っ越してきた。夫はバイク店を開店。その隣に来々軒があった。

 店は、古田強、智枝子さん夫婦が1963年に創業した。智枝子さんの姉がJR福間駅前(同県福津市)で営んでいた同名店の流れらしい。「ラーメン店自体が珍しかった。ようきお客さんが入ってましたよ」と振り返る。

 今よりも濃密な地域付き合いがあった時代。石田さんは30歳代後半から5年ほど店を手伝うなど、古田さん夫婦とは単なる隣人を超えた関係を築いていた。よほど信頼されていたのだろう。2002年に夫婦から相談を持ちかけられた。「店を辞めたいんやけど、引き継いでくれんか」

 石田さんは「ちょうど仕事はしていなかった時期。この味を守ろうと思った」。げんこつ(脛(けい)骨や大腿(だいたい)骨)のみを微妙な火加減で炊き、丁寧にあくを取り除くスープの作り方を先代から学んだ。

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 「最初の一杯が衝撃でした」。石田さんが店を継いでほどなく、長女の一美さん(46)と交際していた山路重紀さん(37)がその味にはまった。当時は福岡市でシステムエンジニアをしていた。

 店には後継者がいなかった。「将来的に継いで、この味を残したい」。山路さんは、09年に一美さんと結婚してからは週末ごとに店に通って手伝った。一方、石田さんは「きつい仕事。会社員の方が良い」と賛成しかねていた。

 ところが4年前、一気に事態が動きだす。石田さんにがんが発覚したのだ。「味を守り継ぎたい」のは共通した思い。山路さんは12年10月に会社を辞め、同11月に店に入った。手術でがんを乗り越えた石田さんに、最初は助言を受けながらスープ作りを学び、2年前に正式に3代目となった。

 「味も良いし、地元にも溶け込んでいる」と石田さんはまな弟子に太鼓判を押す。山路さんは「直接反応があるのがやりがい。うちは他にない味。基本は変えませんが、より良いものを作ってきたい」と意気込む。 (小川祥平)

=2016/08/18付 西日本新聞朝刊=

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