障害者出演する映画製作 介護福祉士で監督の堀河さん 「共生考えるきっかけに」

 介護福祉士として働きながら、障害者と共に映画作りに取り組む映画監督がいる。熊本市出身の堀河洋平さん(37)=東京。9月4日には、新作「千里 翔(と)べ」が、福岡インディペンデント映画祭(福岡市)で上映される。相模原市の障害者施設で46人が殺傷された事件を受け、「たくさんの人に見てもらい『共生』を考えるきっかけにしてほしい」と願う。

 堀河さんは、日本映画学校(現・日本映画大学)を卒業後、憧れだった香港映画界へ飛び込んだ。アクション映画など150本ほどの自主映画を手掛けてきたが、言葉の壁に限界を感じ4年ほどで帰国。映画作りを諦めようと、障害者の訪問介助や外出支援のヘルパーとして働き始めた。

 その現場で出会ったのが、生きるエネルギーに満ちた障害者たち。「映画に出てみたい」という声に後押しされ、障害者が役者を務める映画を作り始めた。堀河さんは「映画を作ることに疲れ果てていたのに、再び撮りたいという力が湧いてきた。一緒に作品を作ることが、障害者の自立につながるのではとの思いもあった」と話す。

 2013年に完成した「上にまいります」では、ラブストーリーを通じて街にバリアフリーが浸透していない現状を描いた。歩きたばこが車いすの目の高さをかすめてひやりとしたこと、優先エレベーターなのに、誰も譲ってくれず車いすが乗れなかったことなど、ヘルパーとしての実際の経験を盛り込んだ。作品は、第3回知多半島映画祭のグランプリを獲得した。

 新作「千里 翔べ」は、子どもたちの友情と成長を描いたファンタジー。脳性まひの小学4年生翔吾は、同級生の健三と一緒に、外国から転入してきた少女・ココをいじめから助けたことで、親友になる。だが、翔吾には家族しか知らない秘密があって-という筋だ。「共生」をテーマに差別や偏見、環境問題などにも焦点を当てた。

 この作品のきっかけとなったのは、3年前に堀河さんの元に届いた1通のメール。差出人は、東京都日野市に住む中学生、中野健吾さん(12)の母親だった。「息子は俳優になるのが夢。エキストラで出演させてくれませんか」。母親は障害者専門の芸能プロダクションを探したが、脳性まひで歩けない健吾さんは募集対象に当てはまらず、諦めかけていたときに、堀河さんを知ったという。

 「健吾君に会って笑顔を見た瞬間、この子が主役だと直感した」と堀河さん。「障害があっても、夢はかなうんだということを形にしたい」と、インターネット上で資金を募るクラウドファンディングで製作費を募り、168万円が集まった。作品には総勢300人が参加し、今年3月に完成した。

 撮影中、健吾さんはアドリブを連発。「初めてとは思えない、柔軟性と度胸に驚かされた」と堀河さん。健吾さんは「表情を作るとか難しいこともあったけれど、役になりきるのがすごく楽しかった。障害がある人、ない人、いろんな人に見てもらえたらうれしい」と話す。

 堀河さんは現在も、週3~4日はヘルパーとして働く。相模原の事件を受け、利用者たちに動揺が広がっているのを痛感しているという。「誰もが病気やけがをするのに、障害者、健常者って言葉で分けること自体がおかしいと思う。障害者も高齢者も、他のマイノリティーも、誰もが排除されたり、制限されたりしない社会になるように、映画という形で発信を続けたい」

 映画祭は福岡市博多区の福岡アジア美術館を会場に、8月25日からの10日間で約200作品を上映。会場で販売される1日券(千円)などで観賞できる。「千里 翔べ」は9月4日午後2時10分から上映予定。映画祭後は、字幕と音声ガイド付きのバリアフリー上映会を全国展開するという。


=2016/08/18付 西日本新聞朝刊=

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