なぜ新聞活用に取り組むのか、NIE全国大会・大分<上>興味の幅広がり、人間性豊かに

西日本新聞

 教育現場で新聞を活用する「NIE」(教育に新聞を)の実践報告をする第21回NIE全国大会が4、5の両日、大分市でありました。教育関係者など約1400人が集まった大会の様子を2回に分けて報告します。

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 第21回NIE全国大会は4日、大分市のホルトホール大分で全体会があり、「楽しくなければNIEじゃない! ~私たちはなぜ新聞活用に取り組むのか、その意義と実践とこつ~」をテーマにパネルディスカッションがあった。

 ■パネルディスカッション 参加したみなさん

 ●コーディネーター

 佐藤由美子さん(大分市立寒田(そうだ)小校長、NIEアドバイザー)

 ●パネリスト

 小野 正嗣さん(作家、立教大文学部教授)

 関口 修司さん(日本新聞協会NIEコーディネーター)

 塩川 美紀さん(大分県日田市立三芳小教諭、NIEアドバイザー、日本NIE学会会員)

 亘鍋 早希さん(大分市立碩田(せきでん)中2年)

 渡辺 美加さん(大分合同新聞社報道部教育担当記者)

 ▼子どもの成長を実感できる喜び

 佐藤「大分県でNIEは広がっていますか?」

 渡辺「学校では新聞教材を活用する機会が増えています。これまでは国語や社会の授業で活用することが多かったのですが、算数などでも取り入れるようになりました。授業の導入部分で新聞を使ったり、記事の書き方を教えたり、新聞紙の再利用法を考えたりと活用の仕方もさまざまです。NIEを実践する先生同士が定期的に情報交換できる場もあります」

 佐藤「テーマにあるNIEの楽しさとは何だと思いますか」

 関口「3月まで小学校の校長をしていました。子どもがNIEを楽しいと感じるのは(取り上げる話題が)タイムリーでリアリティーがあり、(NIEを通じて)自分の成長を自覚できるときでしょう。教師としても子どもの成長が何より楽しみです。東京のある小学校では、NIEの実践前と後の全国学力調査で国語の点数の伸びが全国平均を上回りました。効果の可視化もNIEの活性化や楽しさにつながると思います」

 ▼関心がなかった記事に出合える

 佐藤「NIEに取り組む子どもの声も聞いてみましょう」

 亘鍋「私は新聞のスクラップを続けています。小学校低学年の時に切り抜いた記事を見ると、当時の自分の興味が分かり、自分の成長を感じることができました。また、小学5、6年の時は毎月、自分の気になった記事を学校で紹介する活動をしました。クラスの人がどんな興味を持っているのかも知ることができて面白かったです」

 小野「スクラップの話はとても興味深い。日記は自分の内面について書きますが、スクラップで振り返れば客観的、多面的に自分を知ることができます。インターネットニュースは知りたいものしか知ることができず、知りたいという欲望自体が限定的なものになりがちです。その点、新聞は興味のなかった記事との出合いがありますよね」

 ▼社会とつながり 価値観が多様に

 佐藤「新聞を読む家庭が減っています。学校でのNIEの意義は高まっているとも言えますね」

 渡辺「新聞を教材として使う良さは、多様な価値観に触れられる、答えが決まっていないなどが挙げられると思います。以前、あるNIEの授業で、小学生が環太平洋連携協定(TPP)が気になると言っていました。理由を聞くと、将来、漁師になりたいからだそうです。世の中とつながっているという感覚が意欲につながるのだと感じました」

 塩川「今日の話を聞いて、NIEは特効薬のような効果はないけれど、学力の底上げにもつながっていることが分かりました。日常にニュース感覚があふれてくれば、生活も楽しくなると思います」

 関口「NIEはこつこつ続けることが大事。子どもたちは初めは難しいとか面倒くさいと言う。でも続けるうちに楽しい、分かるようになったと口をそろえるようになります。私の経験ではNIEを週1回、4カ月続けることで子どもたちが主体的にかかわるようになります」

 小野「新聞に没頭している子どもの姿は、遊んでいる時のようでとても美しい。新聞に触れれば人として豊かになります。新聞を読むのは、学力アップが目的ではなく、それはあくまで副次的なもの。遊びやすき間がある人に育つことで、何があってもポキッと折れない人間になるのだと感じました」

(次回は27日に掲載します)

    ◇      ◇

 ●「新聞は虐げられた者の痛みを包み込むものです」 芥川賞作家・小野正嗣さん講演

 第21回NIE全国大会の開会式では、大分県佐伯市出身の芥川賞作家、小野正嗣さん(45)が「言葉に触れる、言葉で触れる」と題して記念講演。「新聞は虐げられた者たちの言葉や痛みを包み込むものだ」と語りかけた。

 小野さんは大分で過ごした幼少期を振り返りながら「畳の上に広げた新聞を、背中を丸め、のぞき込むようにして読んでいる祖母の姿が自分の原風景」と紹介。幼い頃から新聞が身近にあり、それを読んでいた経験が、本を読んだり書いたりする今の生活につながっていると話した。

 また、病床でいつも新聞を広げ、若くして亡くなった自身の兄についても触れた。「兄がなぜ新聞に執着したかは分からないが、おそらく新聞を読むことは生きるための本質的な行為だったのではないだろうか」と推し量った上で「兄にとっては社会とつながるためのものだった」と語った。

 さらに、地元の話題から海外ニュースまで載っている新聞は「私たちの世界の現実を包み込んでいる」と強調。紙面には「喜びや美しいことばかりが載っているのではなく、そこには弱き者たちの言葉にならない言葉や悲しみがある」と結んだ。

 ●九州・沖縄は83校、NIE実践指定校 
 日本新聞協会は「NIE」(教育に新聞を)活動を推進する全国の小中学校などを対象にした2016年度実践指定校を発表した。

 指定校には協会と各新聞社が一定期間、新聞を提供する。各学校では授業などで新聞を使い、子どもの学びに生かす。九州・沖縄の実践指定校は次の通り。

 【福岡県】小学校=味坂(小郡市)嘉穂(嘉麻市)玄海東(宗像市)忠見(八女市)友枝(上毛町)城南(福岡市城南区)鳥飼(同)小森江東(北九州市門司区)大里柳(同)戸畑中央(同戸畑区)▽中学校=太宰府西(太宰府市)羽犬塚(筑後市)直方第二(直方市)那珂(福岡市博多区)花畑(同南区)永犬丸(北九州市八幡西区)菅生(同小倉南区)▽高校=小郡(小郡市)

 【佐賀県】小学校=黒川(伊万里市)西川登(武雄市)▽中学校=嬉野(嬉野市)東部(多久市)▽高校=唐津西(唐津市)

 【長崎県】小学校=小栗(諫早市)西有家(南島原市)▽小中連携=浅子(佐世保市)▽中学校=長崎大付属(長崎市)第三(島原市)平戸(平戸市)彼杵(東彼杵町)▽高校=五島(五島市)佐世保商(佐世保市)西彼杵(西海市)

 【熊本県】小学校=日吉東(熊本市)郡築(八代市)須恵(あさぎり町)美咲野(大津町)潤徳(山都町)▽中高連携=八代(八代市)▽中学校=荒尾海陽(荒尾市)玉名(玉名市)▽高校=多良木(多良木町)南関(南関町)

 【大分県】小学校=舞鶴(大分市)山口(中津市)別府中央(別府市)▽中学校=北(臼杵市)東中津(中津市)高田(豊後高田市)▽高校=大分舞鶴(大分市)別府青山・別府翔青(別府市)▽全国大会枠=大分大付属小、寒田小、鶴崎小、滝尾中、判田中(すべて大分市)

 【宮崎県】小学校=生目(宮崎市)飯野(えびの市)草川(門川町)▽中学校=細田(日南市)小松原(都城市)▽中高連携=鵬翔(宮崎市)▽高校=延岡星雲(延岡市)

 【鹿児島県】小学校=宇宿(鹿児島市)魚見(指宿市)輝北(鹿屋市)国分(霧島市)大隅南(曽於市)柏原(さつま町)▽中学校=福平(鹿児島市)蒲生(姶良市)川辺(南九州市)与論(与論町)▽高校=鶴翔(阿久根市)尚志館(志布志市)樟南(鹿児島市)

 【沖縄県】小学校=高原(沖縄市)室川(同)福嶺(宮古島市)▽小中連携=久志(名護市)▽中学校=美東(沖縄市)▽中高連携=興南(那覇市)▽特別支援=森川(西原町)

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=2016/08/24付 西日本新聞朝刊=

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