里山磨き都市住民と交流 遊歩道整備、古民家改修「夢持てる古里に」 宮崎・椎葉村住民

西日本新聞

 古里の山の再生を通じて都市住民との交流を、と宮崎県椎葉村の住民グループが里山づくりに取り組んでいる。地元で設計会社を営む尾前一日出(かずひで)さん(56)ら計12人だ。「過疎地と言われても、住民が夢を持ち続ければ人はやってくる」との信念の下、遊歩道整備や古民家改修などさまざまな取り組みを展開。この夏から里山巡りツアーも始め、愛する古里を残そうと奮闘している。

 宮崎、熊本県境の九州脊梁山地に近い椎葉村は日本三大秘境の一つ。人口は2748人(6月1日現在)で、この10年で約2割減り、高齢化率も34・87%から41%まで進んだ。山は荒れ、シカやイノシシが人里近くの作物を荒らすようになった。

 昔のようにタケノコ採りや山遊びができるように-。古里の姿に心を痛めた尾前さんは、家族と暮らす集落一帯で、仲間と所有する山林約20ヘクタールの再生を計画。動物が近づかないように間伐で森に風を通し、密集した竹林も伐採した。切った木は再利用できるよう炭焼き窯も設置した。来訪者の体験用に古民家を改修、自然観察のツリーハウスも造っている。

 地元では天孫降臨神話の舞台は、近くの国見岳(1739メートル)と信じられている。昭和期に修験者が修行した洞窟もあり、埋もれた観光資源を生かすために登山道を切り開き、“名所”を巡る遊歩道を設けた。

 里山の魅力を堪能してもらうために各種ツアーも計画。朝霧や星空の観察ツアーのほか、今月から村観光協会と協力して「椎葉トム・ソーヤの大冒険」と題するツアーを開始。福岡市などから約20人を集めて好評を博した。今後も年内2回、来年も2カ月に1度開く予定だ。

 尾前さんは地元中学を卒業後、家庭の事情で、建設会社に大工見習として就職し村を離れた。独学で建築士の資格を取り、通信教育で高校を卒業したものの「椎葉に育てられた」との思いは消えず、「わが子は古里で育てよう」と十数年前に帰郷した。仕事のあてはなかったが、村役場の新庁舎建設をはじめ村内外の仕事も入るようになり、現在では観光協会理事も務める。「村の幸せの感覚は都会と違う。誰もが田舎暮らしはいい、とはならないが、肌に合うと感じる人は住んでほしい」

 里山づくりを通じて、人が集まる古里へ。夢は膨らむ。

=2016/08/30付 西日本新聞朝刊=

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