視覚障害者と歩く<下>「頼みづらい時もある 白杖シグナル知ってほしい」 人の心がバリアフリーに

西日本新聞

 視覚障害がある人は、駅を使うときに限らず、日常生活でさまざまな不自由を感じている。周囲はどんな配慮ができるのだろうか。

 福岡県太宰府市内のコンビニ。県盲人協会長で全盲の池田精治さん(67)=久留米市=は、ジュースを買おうとICカードを取り出した。手元の白杖(はくじょう)で視覚障害者と分かるはずだが、レジ係は「カードを『こちら』に当ててください」と言う。目が見えないと伝え、カードを渡して読み取り機に当ててもらった。

 店を出て、一口飲んだ。「今日はお茶だったか」。なじみの店で冷蔵庫の場所は知っているが、ずらりと並んだペットボトルの中身までは分からない。店員に聞こうとレジ近くで待っていても客が途切れず、いつも自分で選ぶ。「白杖は目の見えない印。何を探しているか一声掛けてくれるとありがたい」

 コンビニ以外でも、店員の少ない店は増えている。吉松政春さん(62)=北九州市=は「セルフサービスの店では自分で空席を探さないといけない。案内してもらいたいが、忙しい時間帯は頼みづらい」と話す。

 タッチパネル端末で注文するタイプの居酒屋や回転ずし店となるとお手上げだ。客が自分で注文するのが前提なので、店員にメニューを読み上げてもらうのは心苦しく「利用できない」。駅のコインロッカーも鍵を使わないタッチパネル式の新型が登場し、1人では使えない所が増えてきた。

 一方、同じタッチパネルでも、金融機関の現金自動預払機(ATM)は付属の受話器で音声ガイドするなど、視覚障害者への対応が進んでいる。金融庁による3月の全国調査ではATMの82%が対応機器だった。

 スマートフォンはさらに進化し、カメラに写った物の名前や、地図上でタッチした施設名や地名を読み上げるアプリがある。インターネットで情報を集め、衛星利用測位システム(GPS)を使って出掛ける人もいるという。

 ただ「物」のバリアフリー化が進んでも、最後はやはり「人」が頼り。福岡県盲人協会は、街角で困ったとき、助けを待つだけでなく、自ら意思表示する「白杖シグナル」を全国に広めている。白杖を真っすぐ頭上約50センチに掲げるこのSOSの合図は、東日本大震災などを機に認知されるようになってきた。池田さんは「ここ数年で助けてくれる人が増えた」と変化を実感している。

 ●街で見かけた時は 肘や肩を貸して誘導 盲導犬は触れないで

 視覚障害者に声を掛けるときは、いくつか気をつけたいことがある。日本盲人会連合(東京)などにポイントを聞いた。

       ◇

 街で困っていそうな障害者を見かけたら、いきなり腕をつかんだりせず、まずは声が届きやすい正面から話し掛ける。誘導する時は肘や肩を貸し、半歩先を歩く。白杖を持とうとする人や、体を押したり引っ張ったりする人がいるが、障害者にとっては怖いことだ。

 大きな音も、何が起きているのか見えず怖いので「工事中です」などと周囲の状況を伝えながら誘導すると安心する。段差や障害物は手前で一度止まり、上るか下るかなどを伝えよう。

 盲導犬が、使用者を誘導するハーネス(胴輪)を着けているときは仕事中。集中力を欠くと使用者を危険にさらすこともあるため、盲導犬に触れたり、食べ物を与えたりしない。飼い犬を近づける、カメラのストロボを向けるといった行為も控えよう。盲導犬は信号は判別できないので「青になりましたよ」などと声を掛けてあげると助かるという。

 視覚障害者は、全盲であっても明暗の区別がつく人とつかない人、視力が弱い人、視野が狭い人など、状態はさまざま。どんな助けが必要か具体的に聞き、相手の立場に立って支援しよう。


=2016/09/09付 西日本新聞朝刊=

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