アクティブ・ラーニング(4)記者ノート 学習塾も走りだしていた

西日本新聞

 学習塾や予備校でもアクティブ・ラーニング導入の動きが広がっている。2020年度導入予定の新たな大学入試をにらみ、走りだしているのだ。

 大学入試センター試験に代わる新テストでは、現行のマークシート式に加え、これまでにはなかった記述式問題、英語ではスピーチテストの導入なども検討されている。各大学の2次試験も、知識偏重型の入試を見直し、思考力や論述力を問う傾向が強まっている。そこではもはや、過去の出題傾向を徹底分析し、重点ポイントを教え込む、旧来型の指導法だけでは太刀打ちできない。

 九州大手の学習塾「英進館」(本部・福岡市)も本年度から、話し合いを重視するアクティブ・ラーニングを導入しているという。

 〈木が成長していくためには必要なものがいくつかある。それと同じように、人間も、成長するためにはさまざまな人々の支えや助けが必要だ。次の絵=イラスト参照=を参考に、あなた自身の成長を木の成長にたとえながら、人々への感謝の気持ちを表す作文を、150字以上、200字以内で書きなさい〉

 国語担当の和智彩夢(わちさやみ)講師(28)は、小学6年生を対象にこんな作文授業にも取り組む。これまでは児童が書いた作文を講師が採点、講評し、返却するだけだったが、本年度授業からは3、4人のグループで作文を読み合う場面を設けた。

 「友達の作文を熟読し、自分になかった所、相手のいい所を見つける。そしてもう一度、自分で書き直してみる。ワクワク感もあり、考えの幅も広がる」。和智講師はそう話す。

 小学5年生を対象にした社会科の授業では、縄文時代と弥生時代の違いを学んでいた。まず10分間の教材映像を視聴。そこからどんな情報が読み取れるか、ペア、グループ学習で理解を深めていった。両時代の概要は7月末にテキストで学習しており、この日の対話型学習はその知識の定着を狙うものだった。指導に当たった平野孔一講師(47)は「私たちは、子どもたちに寄り添うガイド役。実はそっちの方が、子どもたちの学びのスイッチが入るようだ」。塾の授業風景も変わり始めていた。

 難関中学入試では最近、意表を突く出題が少なくない。〈ドラえもんは生物とは認められません。なぜですか?〉(麻布中学校、13年、理科)

 久留米大付設中(福岡県久留米市)入試でも今春、国語問題で2枚の写真を提示し、そこからどんなことが読み取れるか、○字以内に記述せよ、といった出題があり、講師たちも正答は何か、悩んだという。

 いずれの出題も正答は一つではない。「答え」でなく、その思考プロセスや組み立て、発想力を「学力」として測ろうとしている。出題傾向の変化を読み解くキーワードの一つが「知識基盤社会」とされる。

 先進国でつくる経済協力開発機構(OECD)では20年、産業ロボット、人工知能などの普及により、労働人口のうち製造業が占める割合は1割を切り、多くは知識情報産業に従事する時代が来ると予測。そうした知識基盤社会を生きる子どもたちに求められる「21世紀型学力」は、覚えている知識や情報の量ではなく、その知識をどう読み解き、活用するかになる。

 難関中学の入試問題は、そうした時代潮流の中で、大学入試より先行する形で、子どもたちに21世紀型学力を問うている。そこで求められるアクティブ・ラーニングとは何か? 子どもたちばかりではなく、授業改革に向け、教員同士の学び合いも求められているようだった。

 生徒と一緒になって授業研究を

 日本協同教育学会の初代会長を務めた安永悟・久留米大教授(教育心理学)の話 アクティブ・ラーニングという授業手法は欧米で広がっているものだが、日本独自の授業改善運動「授業研究」でも模索が進んでいる。そうした教員たちが積み重ねた授業実践例も踏まえ、児童生徒も一緒になって、授業改善に取り組む契機と捉えるべきだ。

 クラス全体の学習活動を高めることが、個人の成長をより促す。私たちはそんな視点に立ち、協同学習の研究に取り組んでいる。ただ、それぞれの子ども、学校によっても発達段階には違いがあり、アクティブ・ラーニングという「一斉教育」にしてはいけない。

 2002年に導入された「総合的な学習の時間」は、アクティブ・ラーニングそのものを目指したものだった。豊かな授業実践もあるが、多くは地域課題の調べ学習に終わり、子どもたちの学びは能動的になっていない。同じ道を歩まないためにも、教員自身の授業研究と実践が求められている。

=2016/09/25付 西日本新聞朝刊教育面=

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